藤屋の店内は、ロックバカのあっちゃんが築き上げたワンダーランド
「両方とも遊びっすね、こんなんなっちゃってんですから(笑)」
あっちゃんが指差す藤屋の店内に並べられているものは、お菓子だけではない。古いレコード、雑誌、ニューロティカや他のバンドのグッズ、DVD、記念品、ポスター、ペコちゃん人形ほかお菓子のノベルティ、プロレスや野球、バスケ関連のグッズ、さまざまな人たちと撮った記念写真、ファンからもらったプレゼントやお便り、有名人の色紙などなどなど……。
あっちゃんがロックな人生の場面場面で獲得してきた戦利品の数々が、売り物であるお菓子と並列で、店内の棚に所狭しと並べられているのだ。
あっちゃんは「一つひとつ説明したいですもん」と言って、実際にいくつかのアイテムに対する思い入れを語ってくれたのだが、お店の中のものすべてを紐解いていったら、本当に何日もかかってしまいそうだった。
藤屋は、今年59歳になる井上篤という一人のロックバカの夢あふれる脳内を、そのまま現実化したような、まさに“遊び場”。バラバラなアイテムがぎっしり詰め込まれた店内は混沌としているように見えながら、実は非常に調和の取れたカラフルなワンダーランドとなっている。
きっと几帳面で真面目な性格のあっちゃんが、日々、配置をあれこれと考えて試行錯誤しながら作り上げた空間なのだろう。
そんなあっちゃんのお店を訪ねてくるのは、地方からはるばるやってきたニューロティカのコアなファンから、バンドマンとしての彼を知らない、近所に住む常連のお年寄りや子どもたちまで幅広い。
「東京で大きなライブをやった次の日なんか、地方から泊まりで来たファンの方がたくさん、このお店にも足を運んでくれて、みんなお菓子を買ってってくれますよ。ファンがいなかったら多分、うちの店はやばいのかもしれない(笑)。売り上げの半分くらいは、ファンが買ってくれてるんじゃないですかね。
この寄せ書きがある日の丸は、去年の武道館ライブの記念です。こっちの絵は、ファンの方のお子さんや、近所の子どもたちが描いてくれたもの。
あそこに丸山圭子のレコードがあるでしょ。僕、昔から丸山圭子さんが大好きなんです。で、インスタでタグ付けしたら、本人から『レコードをとても大切にしていただいて、ありがとうございます』ってコメントがついて。びっくり。あれは、うれしかったなあ。
それと、あっちにアントニオ猪木さんの写真があるじゃないですか。あれは……」
店の中のものをあれこれと語るあっちゃんは、宝物で埋め尽くした秘密基地にいる少年のように幸せそうだった。
ドキュメンタリー映画「あっちゃん」
2015年に劇場公開された、ニューロティカ結成30周年記念ドキュメンタリー映画『あっちゃん』(監督:ナリオ)の英語字幕バージョン! どこにでもあるお菓子屋さんに生まれた男の、どこにもない生き方。イノウエアツシの50年、ニューロティカの30年。すべての答えはこの映画で明かされる。
蒼井そら、綾小路翔(氣志團)、宮藤官九郎、HIKAGE(THE STAR CLUB)、PON(LAUGHIN’NOSE)ら多くの出演陣の証言にも注目!
文/佐藤誠二郎
【プロフィール】
アツシ/1964年10月20日生まれ、東京都八王子市出身。
1984年1月に結成したパンクロックバンド「ニューロティカ」のヴォーカル。
85年、仲間とともに「ネオファミリーレコード」を設立。1stソノシート「Go or Stop!」をリリースし1000枚を完売。89年5月、「キャプテンレコード」より初のフルアルバム「ハーレム野郎」をリリース。インディーズながら渋谷公会堂ライブなどを成功させる。
1990年6月シングル「ア・イ・キ・タ」でメジャーデビュー。以後、何度かのメンバーチェンジをしながらバンド活動を続け、2022年1月にバンド初の日本武道館ライブを成功させる。2023年10月29日(日)には日比谷野外音楽堂でのライブも決定!
その他最新情報は下記でチェックを!
公式ツイッター:@NEW_ROTEKA
公式HP:ニューロティカ公式HP
【撮影協力】
藤屋菓子店(東京都八王子市本町3-9)