物語を生み出す「設計図」と「あみだくじ」

黒川 松嶋さんはプロット(物語の設計図、構成)をしっかり立てる人でしょう。

松嶋 えっ、誰かにお聞きになられました? その通りなんです。

黒川 いえ、読んだら分かりました。『流警』、とても面白かったです。犯人、最後のあたりまで、本当に誰か分からへんかった。あっちこっちに伏線があって、お上手やったと思います。

「警察の隠蔽体質にリアリティーがある」警察小説の大家と元女性白バイ隊員作家が語る“警察小説のリアルとフィクション” 黒川博行×松嶋智左_3
元捜査一課の南優月は、被疑者の護送中に起こした事故が理由で「流刑」に。警察署が不要となり格下げされた、過疎地の警部交番で、禊の日々を過ごしていた。そんな辺境の地に突然、キャリア警視正が赴任する。時を同じくして、地元の名士の妻が殺害され、ともに犯人を追うことに。謎が謎を呼ぶ捜査の行方は。矜持を見失った警察官の行く末は。元白バイ隊員の著者が書き下ろす、迫真の警察小説
すべての画像を見る

松嶋 いえいえ、とんでもないです。とにかくすぐに犯人が分かったらいけないので、怪しい人をもう一人増やそうとか、登場人物のおかしな行動を入れようとか、いろいろと工夫はしました。黒川さんはどういうふうに書かれるんですか。

黒川 僕はプロットは考えへん。

松嶋 えっ、いきなり書くんですか。

黒川 主人公のキャラクターと職業、それぐらい決まったら、あとはどんどん書いていく。あみだくじありますよね。あみだくじのどっちへ進むかというのを何遍も何遍もやるんです。

松嶋 ああ、なるほど。ここに来たらどっちの分かれ道へ行くかと。

黒川 そうです。そのたびに考えるんです。ここはこうしたほうが面白いとか。だから、あした、あさってのことしか考えてない。小説の中では。

松嶋 すごいですね。でもちゃんとお話が収まりますよね。

黒川 収まります。あみだくじをやっていたらどっかに行き着くんです、必ず。

松嶋
 最初は犯人も分からないみたいな感じですか。

黒川 そう。犯人なんか考えたこともない。

松嶋 考えたことないんですか! でも面白い。ご自分が物語の中に入って、犯人を探してるような感じなんですね。