物語を生み出す「設計図」と「あみだくじ」
黒川 松嶋さんはプロット(物語の設計図、構成)をしっかり立てる人でしょう。
松嶋 えっ、誰かにお聞きになられました? その通りなんです。
黒川 いえ、読んだら分かりました。『流警』、とても面白かったです。犯人、最後のあたりまで、本当に誰か分からへんかった。あっちこっちに伏線があって、お上手やったと思います。
松嶋 いえいえ、とんでもないです。とにかくすぐに犯人が分かったらいけないので、怪しい人をもう一人増やそうとか、登場人物のおかしな行動を入れようとか、いろいろと工夫はしました。黒川さんはどういうふうに書かれるんですか。
黒川 僕はプロットは考えへん。
松嶋 えっ、いきなり書くんですか。
黒川 主人公のキャラクターと職業、それぐらい決まったら、あとはどんどん書いていく。あみだくじありますよね。あみだくじのどっちへ進むかというのを何遍も何遍もやるんです。
松嶋 ああ、なるほど。ここに来たらどっちの分かれ道へ行くかと。
黒川 そうです。そのたびに考えるんです。ここはこうしたほうが面白いとか。だから、あした、あさってのことしか考えてない。小説の中では。
松嶋 すごいですね。でもちゃんとお話が収まりますよね。
黒川 収まります。あみだくじをやっていたらどっかに行き着くんです、必ず。
松嶋 最初は犯人も分からないみたいな感じですか。
黒川 そう。犯人なんか考えたこともない。
松嶋 考えたことないんですか! でも面白い。ご自分が物語の中に入って、犯人を探してるような感じなんですね。