黒川博行も絶賛する、迫真の警察小説『流警』
黒川 『流警』の舞台になっている傘見警部交番は、元は警察署やったけど、規模が縮小されて警部交番に格下げになった。この警部交番を使おうと思ったんはなぜですか。僕はこういう制度があるって知らんかった。
松嶋 ほかの作品で地方の警察署を調べていて、交番の位置を示す地図を見ていたら、警部交番という文字が目に留まって。正直言って私も初めて見たんですけどね。人口が減ってきているので、とくに地方ではこういうことがあるんだろうなと思ったんです。
黒川 『流警』に出てくる警部交番は相当大きな建物でしょう。
松嶋 そうです。もともと警察署だった建物をそのまま使っているので。
黒川 その大きな建物の中に、署員はあまりいない。空き室だらけっていうのも使い道がありそうで面白い。あとは(ご自身の書いたメモを見て)、「コンビニ事件の犯人逃走について、警察の隠蔽体質にリアリティーがある」って書いてある。「そこが私には一番面白かった」って。
松嶋 本当ですか。ありがとうございます。でも私はそのエピソード、あまり深く考えてなかったんです。過去のあるヒロインを設定するために、こういうことがあったら、と考えたので。
黒川 その南優月は、続編には出てこないんですか。
松嶋 どうでしょう。こういうことをしでかした後、警察でどういう処分になるのか。まだちょっと考えてないですけど。
黒川 被疑者に逃げられて傷物になった、優月みたいな警察官を使うのは面白いと思いますよ。
松嶋 そうですね。優月本人もそうですけど、周りも傷を負っているから、その後に影響もあるだろうし。優月がどうやって立ち直っていくのかということもありますね。
黒川 コンビニ事件で逃亡した被疑者に、もっともっと大きな事件を起こさせましょうよ。大きな事件なら、(キャリア警視正の)榎木孔泉も関わってくるやろうし、優月も過去のいきさつを知っているから呼ばれてもおかしくない。そんなふうにして広げていったらいい。僕は書く時、いつもそんなふうに考えてます。
松嶋 この次はどうなるか、と考えていくんですね。なるほど。
黒川 そうしたら小説そのものが一作目よりも大きくなりますよ。次は大事件起こしましょう。
構成/タカザワケンジ
撮影/大西二士男写真事務所