徳重氏がUTMに注力するのには、もう1つ理由がある。それは心の底にある「日本からメガベンチャーを生み出したい」という想いだ。
徳重氏はかつてシリコンバレーで数々の起業家たちの育成に携わり、メガベンチャーの誕生を目の当たりにして「日本との差を見せつけられた」と悔しさを味わった。その後立ち上げたテラモーターズはインドや東南アジアで高いシェアを獲得し、メディアからも注目を集め、上場にリーチをかけるほどになった。
しかし、単に上場するのは「性に合わなかった」という。
「私が頭の中で描いているのは常に”ビッグビジネス”。目指すところは新産業で世界を獲ることで、そのためにリスクを承知でテラドローンを創業しました」
壮大なビジョンと堅実さを持ち合わせ、競争を勝ち抜く
一方で、オフィスは実績を有する52歳の経営者が構えるものとは思えないほど質素だ。それもそのはず、現在のオフィスはシリコンバレーならぬ「ビットバレー」の渋谷から羽ばたいた、数々のベンチャー企業が創業当初に入居していた部屋だ。
徳重氏は「オフィスだけ大きいのはどうかと思います」と語り、こう続けた。
「僕たちはビジョンは大きいですけど、地道にやる。本当に地道なんですよ」
この徳重氏の発想が、UTMというビッグビジネスの種を引き寄せたのかもしれない。
今後さらなる活用が見込まれるドローンビジネスは、まだまだ黎明期だ。だからこそ、徳重氏は大きな展望を描く。
「ドローンも空飛ぶ車も新しい産業で、いずれEVのように時代が追い付くはず。そのときに世界のトッププレーヤーであることを目指しています。日本の会社でも世界レベルのメガベンチャーになれることを示せば、若い人にチャレンジ精神や世界に対して自信を持ってもらえる。その一役を担いたいですね」
そう語る徳重氏を含め、新産業の覇権を握る“ゲームチェンジャー”の座を狙い、世界規模での競争はまだまだ続く。そして、その争いの激化によって、まだ見ぬ未来の実現に向けたスピードは、さらに加速するだろう。
溢れんばかりの野心と蛮勇を持ち、今も成長途上だと自認する経営者の戦いは、まだ始まったばかりだ。