福岡商業施設女性刺殺事件の場合

ただし、少年院は周りの大人がすべて理解者であり、24時間見守ってもらえている特殊な環境だということだ。そこから離れた場合、彼らは適切に服薬することができなくなり、トラブルを起こすことがある。先の医師は次のように語る。

給食中にクラスメイトをフォークで刺した加害者―薬をうまくコントロールできない発達障害の子供たち_3

「かなりひどい暴力を振るう子供たちは、家庭が壊れていることが少なくありません。親が暴力を振るう、親自身が発達障害や精神疾患に悩まされている、親が子供をネグレクトしているといったことです。

そうなると、医者が薬を飲んだ方がいいとアドバイスして処方したところで、子供たち本人がそれを正しく服用することができません。少年院で医者や法務教官が24時間生活の管理をしていればいいですが、そこを出てしまえば家族の支援がないので自力ではそれができない。それで勝手に薬の服用を止めたり、飲んだり飲まなかったりすることで、逆に子供たちが苦しい状況に陥ることがあるのです」

冒頭で述べた福岡の殺人事件の加害少年がまさにそうだろう。彼が処方されていたのは薬の中には発達障害用以外のものも含まれていたようだ。しかも、親は出院後の息子の引き取りを拒否していた。そうした状況でいきなり薬を止めさせ、出院させたのだから、突然精神のバランスを崩した状態で社会に放り出されたのと同じだ。

私は他にも、発達障害の子供が薬のコントロールができずに起こした事件をたくさん知っている。

たとえば、ある17歳の少女は幼少期から激しいイラ立ちに心をかき乱されており、目の前にいる人にほとんど無差別的に食ってかかるような状態だった。小4の時に再婚した養父が見るに見かねて病院へ連れて行き、複数の薬を服用するようになり、少しは精神状態が落ちついた。

だが、中2年の時、その養父に少女は性的虐待を受ける。それで少女は家出をするのだが、同時に医療機関とのつながりが絶ち切られ、薬を服用することができなくなった。彼女は再び激しいイラ立ちに苛まれ、夜の街で通行人を襲って暴力を振るうなどの行為をくり返した。そして最後は逮捕され、少年院へ送られることになった。

これとは反対のケースもある。15歳の少年は、教育に厳しい両親の元で育った。少年はADHDで集中力が続かず、動き回ってしまう特性があった。両親は勉強に集中させようと病院で薬を処方してもらった。