母親のことが大好きだったのだが…
友人は慮り、こう続けた。
「1年ほど前に龍稀と話したときは、紗菜さんと横浜で同棲していると言っていました。昔から龍稀のことは知ってます。龍稀の家は複雑で、あいつ自身はマザコンかって思うくらい母親が好きでした。ただ、その一方で母親が再婚することに関して弟や妹のことを考えると、母親のことを許せないという気持ちもあったようでした。そういう背景もあって家出を繰り返しながら友達の家を泊まり歩いてました。ただ、中学時代から誰かに暴力を振るっているのは見たことありません。周りで友人たちがケンカをしていても、龍稀は『殴るのも殴られるのも嫌だから』と加勢することも一切ありませんでした。それだけ暴力を嫌がってたのに何やってんだ馬鹿野郎って思います」
高校を中退後に伊藤容疑者がアルバイトを始めた立ち飲み屋の店長は、取材を始めたときはまだ事情をよく飲み込めていなかった。だが、話すほどに感情がたかぶったのか、涙をこらえるのに必死だった。
「え? ハルキ? 嘘だろ。殺人事件のニュースってあのハルキなのかよ……。もちろん知ってるよ。あいつが高校中退してからウチにバイトに来ていたから。当時は携帯代が払いたいってことで働きにきていて、週3〜4のシフトで出ていた。まだ、未成年だからってバイトが終わった後にはオーナーが家まで送りに行っててさ。接客も明るくて愛嬌があってさ、当時まだ高校生の歳なわけだから客にも可愛がられていた。笑顔が可愛らしいやつだったんだよ。ほんと仲間思いでいいやつだったんだ。
ウチでは1年くらい働いてたけど母親が再婚して山形に行くとかで、ハルキもそれについて行くということでバイトはやめたんだ。家庭環境が複雑だという話は聞いていたよ。なんていうか、妹と弟をいつも守ろうとしてる感じがあってね。人の家庭の話を詳しくは言いたくないけど、再婚とかあったし妹と弟のことを思って母親とぶつかっていた部分もある。でもあいつ自身は母親のことがすごい好きだったから悩んでたように見えた」
しかし3年ほど前、「ハルキ」は山形から横浜に舞い戻ってきた。
「3年前くらいだったかな。山形から戻ってきたあいつに『飲み行きましょう』って誘われて、一緒に飲んだんだよ。そのときは『店長やってます』って頑張ってる感じだった。そうか……。ハルキがあの事件を……。仕事が終わったら今日は飲みに行こうと思ってたけどショックでそんな気になれないわ。すごく慕ってくれて俺も可愛がってたやつだから」
インスタを通して、紗菜さんとの関係を修復したいという必死の気持ちを伝えようとした「ハルキ」。だが、「ハルキ」は彼女を自らの手で消し去ってしまった。赦しは二度と、もらえることはない。
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取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班
#1「オマエ、俺と別れたら知らねえからな」子役女優としても活躍した被害女性は警察に4度相談。SNSのアカウントを何度変えてもつきまとわれ…容疑者のニート男はヒモ状態だった…
#2「女にフラれると『自殺する』とLINEに」…親友が語った伊藤龍稀容疑者(22)の素顔と複雑な家庭環境「親に冷たくされ家出、仕事を転々として蒲田の飲食店で出会ったのが紗菜ちゃんでした」