映画『ジョーカー』鑑賞後にツイッターを開始
池田 そうですね。彼はツイッターを2019年10月13日に始めていますが、10月4日に『ジョーカー』という映画が日本で公開されています。その公開日の翌日(10月5日)に山上被告は『ジョーカー』を見ています。
五野井 相当なフリークですよね。
池田 彼は名古屋で見ています。なぜ名古屋なのかというと、その翌日に旧統一教会の大きなイベントがあって、韓国から韓鶴子総裁が来てスピーチをするので、彼女に火炎瓶を投げつけようと思ったからです。だからその前日に名古屋に入り、映画を見て、一泊しています。韓鶴子のイベントは屋内だったので、警備が厳しく、遠くから見ただけで諦めて、6日に奈良に帰っています。その一週間後にツイッターを始めているわけです。
ツイッターを始めた翌日の10月14日に「オレがに憎むのは統一教会だけだ。結果として安倍政権に何があってもオレの知った事ではない。」(原文ママ)とツイートしています。これは、実際の犯行の前日にジャーナリストに宛てた手紙のなかで、政治的な影響がどうかなんて自分には考える余裕がありませんなどと述べたくだりと瓜二つです。実際の事件の前の約3年間の最初と最後がほとんど同じ言葉で締めくくられていることになります。しかし、これをもって、「事件の3年前から山上被告が犯行を計画していた」と見るのは違うと思います。
五野井 私もそう思います。2019年時点では、旧統一教会の非道さや自民党(安倍政権)と旧統一教会の関係を暴くことに主眼を置いたツイートであって、これをもって安倍首相を殺そうとする意志が3年前からあったとするのは早計だと思います。
池田 旧統一教会のしてきたこと、それを利用した政治家がしてきたことを白日のもとにさらしてやれ、という強烈な意志は感じますけれどね。
五野井 2019年10月時点では、山上被告は『ジョーカー』の主人公のアーサーにびっくりするくらいの感情移入をしています。そこについては、山上被告の成熟があまり感じられないなと思っています。
池田 そうですね。『ジョーカー』のアーサーをあまりにも自分に引きつけて考えてしまっているように思いました。それだけ山上被告にとって衝撃的な作品だったということは言えると思いますが。