“スポーツを学校から地域に委ねる案”の修正…
「部活は大事な学校教育」

解の一つは子どものスポーツを地域に委ねることだ。欧米は会費や補助金で運背する地域のクラブが主に担う。文部科学省も将来的に部活運営を地域団体に移す方針を掲げる。だが受け皿探しや人材確保を任された現場は困惑する。

公立中の野球部やサッカー部の廃部が相次ぐ北海道紋別市。21年度から土日の地域移行を模索したが、地元競技団体が「指導者がいない」と難色を示した。市議会でも「部活は社会性を学び、仲間との連帯感を育む大事な学校教育の要素だ」との意見が上がった。計画は白紙になり、地域に委ねる難しさが浮かんだ。

反発の大きさから、スポーツ庁は当初方針の修正を余儀なくされている。22年5月末に有識者会議がまとめた提言は23-25年度を「改革集中期間」と位置づけ、離島や山間部を除いた全国で3年間の土日の移行完了を掲げた。同庁もこの提言をベースに必要な予算獲得に動いていた。

30年後、野球部員は1校3.5人に…部活動を維持できないケース多発! それでも改革を拒む教育ムラの人々は「部活は大事な学校教育」と言う_3
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「改革集中期間」ではなく「改革推進期間」トーンダウン

しかし、自治体を中心に「スボーツ団体や指導者など教育資源に乏しい地方の立場を重視すべき」「拙速に進めることではない」といった厳しい声が寄せられた。

結局、22年12月にスポーツ庁がまとめた指針では「改革集中期間」ではなく「改革推進期間」とトーンを弱め、達成の目安とする時期を定めなかった。同庁担当者は「改革を進めるために高い球を投げた面もあるが、3年間では実現不可能と考える自治体が多い。いったん目標となる時期を取り下げざるをえなかった」と明かす。

日本の学校生活の中で大きな存在感を示してきた部活動。少子化や教員の働き方の問題から従来通りの形で維持することは現実的ではなくなっている。一方、地域の団体を受け皿とする改革には課題が山積する。

子どもが希望するスポーツに打ち込める環境を整える。それが「知・徳・体」をバランスよく育む道であるはずが、八方ふさがりが続く。大人が知恵を絞るときだ。

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『「低学歴国」ニッポン』
日本経済新聞社
2023年5月9日
990円
216ページ
ISBN:978-4296117376
大学教育が普及し、教育水準が高い「教育大国」――そんなニッポン像はもはや幻想?
日本の博士号取得者数は他先進国を大きく下回り、英語力やデジタル競争力の世界ランキングでも年々遅れをとっている。      

とがった能力の子をふるい落とし、平均点の高い優等生ばかり選抜する難関大入試。世界の主流とずれる4月入学。理解が早い子にも遅い子にも苦痛なだけの「履修主義」指導……。

岩盤のように変化を忌避する学校教育はいま、私たちの未来をも危うくしている。   
世界をけん引する人材を輩出するには、「何」を変えればいいのか。教育の今をルポし、わが国が抱える構造的な問題をあぶり出す。

【目次】
はじめに 日本人の「低学歴」化を見つめる
第1章 変わらない日本の「学校」
第2章 いびつな日本の「学歴」問題
第3章 二極化する「入試」、形骸化する「偏差値」
第4章 「学校崩壊」避けるためにできること 
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