強い選手が2人いるレースの方が
勝ちやすい?

――新人選手だけで争うルーキーシリーズのデビュー戦は、2022年4月30日の松戸でした。

2次試験に合格した段階である種の覚悟を決めて、養成所で24時間自転車と向き合うことで、プロとしての自覚も持ったはずなのに、本番を前にするといきなり不安が襲いかかってきました。

――敢闘門という入場ゲートが開いて、選手はそこからコースに出ます。

本当なら卒業記念レースは、お客さんの前でやるんですけど、コロナ禍のため、無観客でのレースになってしまって。なので、この日がはじめてお客さんの前で走るレースだったんですが、とにかく人が多くて熱気がすごくて、私にとってはものすごい衝撃でした。

――初勝利は、7ヶ月後の11月20日、佐賀県・武雄競輪場です。

私の中では、先輩たちと横一線でスタートするレースに勝つのは、最低でも一年はかかると思っていたので、デビューしたその年に勝てたことは、正直驚きでしたし、同時にすごく嬉しかったです。

内定していた企業も公務員という道もすべて捨てて、ガールズケイリンの選手へ。塩田日海がそれでも自転車に乗る理由_3


――勝因を挙げるとすれば?

レースは7人で走るんですが、結果的に私が勝てたそのレースに、強い選手が1人ではなく、2人いたことです。

――えっ!? それってどういうことでしょう? 1人ならまだしも、2人いたらそれだけ厳しい戦いになると思うのですが。

強い選手が1人だけだと、みんなその選手の動きに合わせてレースをすることになるので、主導権は強い選手が握ることになり、レースは、ほぼその強い選手が思い描いていた通りに進み、結果その強い選手が勝つことが多くなります。

――なるほど、言われてみるとその通りです。

でも、強い選手が2人いるとその強い選手同士も牽制し合うし、周りも2人の動きを注視するので展開が緩んで、そこに付け入る隙が生まれることがあるんです。私が勝ったレースはまさにそんな感じでした。

内定していた企業も公務員という道もすべて捨てて、ガールズケイリンの選手へ。塩田日海がそれでも自転車に乗る理由_4

――レース前にそこまで読み切る?

読み切るところまではいきませんが、今の私の力で先輩たちと勝負できるとしたらその展開しかないので、思いつく限りのパターンをイメージして、その中のひとつにうまくハマってくれたので勝利できましたね。