キャリアを受け入れたSBIホールディングス
次官経験者がこんな体たらくである以上、次官以下のポストで退官を余儀なくされた人たちの天下り先は推して知るべしである。
ここ何年か年を追うように天下りのルートが目詰まりを起こし、人事担当の官房長・秘書課長が難渋するケースが相次いでいる。最近流行りの社外取締役などに活路を見出す事例が増えているが、そうした汲々とした現状を端的に示す天下りの受け皿が一時期話題になった。
金融持株会社のSBIホールディングスがそれで、2020年前後、財務省からキャリアの天下り六人を抱えたことがある。北尾吉孝社長の思惑は推測するしかないが、業務に有効なアドバイスを求めてとはいえ、ここまで多数のキャリアを受け入れると、癒着を指摘される危険がないとはいえない。政府系金融機関ではなく一民間金融会社への天下りなので、個人名は伏せてSBIでの肩書きだけを列記してみる。(なお、彼らの入省年次は72年から84年まで12年間に及び、以下の肩書きは年次順)
社外取締役
SBI大学院大学教授
子会社社長
SBI大学院大学委託講師
専務取締役
地方銀行担当事務局長
テレ朝記者にセクハラした福田淳一元次官も
あえて匿名の記述を選んだが、6人のうち2人はマスコミに取り上げられた経緯もあり、実名を明らかにしよう。
社外取締役を務めたのは五味廣文元金融庁長官(72年)で、SBIが新生銀行を連結子会社化したのを契機に、同行の会長に就任した。新生銀行の前身は、98年に経営破綻した旧日本長期信用銀行であり、子会社化の時点でも3500億円にのぼる公的資金の返済義務を負っていたため、その履行などが新会長に課せられる重要な柱になると推測された。
もう一人、大学院大学委託講師に就いたのが、民放女性記者へのセクハラ疑惑で辞任に追い込まれた福田淳一元次官(82年)である。一種のハレンチ行為で職を辞しただけに、天下りは当面難しいのではと見られていたが、恐らく官房長・秘書課長の大臣官房ルートではなく、本人のツテを頼りにSBIへの再就職を決めたのであろう。ことに財務省関係者からは驚きの声が上がったが、辞めた理由が理由だけに、次官経験者という体面にこだわる余裕などなかったというのが現実だったのではないか。
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