ヒバゴンにツチノコ!
学術的視点でロマンを追い求めるUMAファン
ここからは過去を振り返り、1970年代のUMAブームの熱狂について敏太郎さんに伺った。
「1960年代の後半から『ゴジラ』シリーズや『ウルトラQ』、『ウルトラマン』シリーズといった特撮作品が社会現象になったことで、怪獣的な存在に関心が集まり、オカルトブームの一ジャンルとして取り上げられるようになったことが大きいでしょう。
僕は1966年生まれなのですが、小学6年生だった1977年にニュージーランド沖で、ニューネッシーと呼ばれる、首長竜の死体と思しきものが漁船の網にかかった有名な写真が新聞に載ったときは、大変興奮したのを覚えていますね」
そのほかに、当時熱狂を巻き起こしたUMAにはどのようなものがいたのだろうか。
「1970年代の日本で人気があったのは、広島県の比婆山連峰で目撃されたとして大ブームになった類人猿・ヒバゴンですね。ビッグフット的な存在がリアルタイムで日本に現れた衝撃はすごかったです。
あとは超有名どころで言うとツチノコですね。胴体が膨らんだ蛇のような生き物で、遡ると縄文時代の土器にツチノコを思わせる意匠が描かれているなど、古くから伝説のあるUMAです。1970年代当時、数多くのメディアで取り上げられ、捕獲したら懸賞金を出すという人まで現れました」
なぜ人はここまでUMAに魅せられるのか、その見解も興味深い。
「UMAが他のオカルトジャンルとは一線を画す玄人向けジャンルだからでしょう。かつては怪獣や妖怪と一緒くたにされていたUMAですが、1950年代の中盤から“発見したら学術図鑑に載るような存在”として認知され、妖怪や怪獣とは違うリアルな生物としての棲み分けが顕著になってきました。ファンにとってUMAは、“学術的・科学的な視点で選別していく存在”なのです。例えば、有名なUMAに南米で目撃談が相次いでいる、身長約1mの背中に棘の生えた吸血獣のチュパカブラがいますが、あいつはUMAファンの間では『もはや妖怪だろ』と小物扱いされています(笑)」
てっきりロマンを追い求めるのが“UMA道”だと思っていたが、学術的な視点が重要だったとは……。
「学術的な視点と共にロマンを追い求めているのです。“ネッシーはネス湖にはいない説”などがいい例です。ネッシーの正体と目されている首長竜は、遺伝子の劣化を防ぐ形で種を存続させるはずなので、1エリアに200頭はいなければならない。そうなるとネス湖の広さではその種の生存は難しいとなる。そのため、ネス湖以外の場所が本来の生息地域ではないのか?と夢を見るわけです」