昨年末からの約1年間は「沖縄イヤー」
いったいどういうことか。順を追って説明していこう。
まず、昨年12月、映画『THE FIRST SLAM DUNK』が公開された。そこで沖縄県出身の宮城リョータのルーツがしっかりと描かれているのは周知の通り。宮城の声優を、沖縄県出身の仲村宗吾(身長も宮城と同じ168cm)が任されるほどの徹底ぶりだった。現在、本作は中国をはじめ海外でも熱狂的に受け入れられている。
さらに、今年8月から9月にかけてフィリピン、インドネシア、日本でバスケW杯が開催されるが、日本での試合はすべて沖縄で行なわれる。そして、その会場となる琉球のホーム・沖縄アリーナでは、2024年初頭にはBリーグのオールスターが開催される予定だ。
つまり、昨年末の映画『THE FIRST SLAM DUNK』公開からのおよそ1年間は“沖縄イヤー”とも言える期間なのだ。
そんなタイミングで、琉球は初優勝した。
しかも、決勝を戦った相手が、“日本バスケ史上最強チーム”だったから、その価値はさらに大きい。
5月27日から行なわれたBリーグファイナルズで顔を合わせた千葉ジェッツ(以下、千葉)は、Bリーグ優勝が1回で、準優勝も2回。天皇杯優勝は4回を数える。Bリーグ創設からの獲得タイトル数はもちろん最多だ。何より、今季のレギュラーシーズンでは53勝7敗というBリーグ史上最多勝利数を記録した伝説のチームである。
彼らの武器はスピードと、多くの3Pシュートを決めてくる攻撃力だ。
Bリーグでは屈強な外国籍選手がセンターなどゴールに近いポジションを占めるのが一般的なのに対して、彼らはスピードと上手さのあるアウトサイドのポジションの外国籍選手を2人(*1チーム3人まで)も要している。これは日本代表が目指す「スピード」と「3Pシュート」を武器にしたスタイルとも重なるものだ。
そうした背景から、戦前の下馬評は「千葉が優位」という声が圧倒的だった。
しかし――。
「小さい者たちが大きい者に挑んでいくのが沖縄バスケットボールのルーツ」と岸本が常々語ってきたとおりの構図で、Bリーグで最も収入のある千葉を相手に、琉球は世間をアッと驚かせた。
ファイナルズは最大3試合、2戦先勝方式で行なわれるのだが、琉球は“史上最強チーム”を相手に無傷の2連勝で優勝したのだから。