『サレタガワのブルー』の魅力④:“サレタガワ”のリアルな戦い方で得る学び
本作の大きな魅力の1つとして“とにかくリアルなことが挙げられるが、その理由として“サレタガワ”が離婚を望んだ際に、どう動けば良いかが具体的に描かれていることもある。
例えば、第21話では、裁判となると「トークアプリの会話だけでは『ふざけていました』で逃げられる可能性があるため弱い部分がある」「肉体関係が3回以上あったことを立証する事が重要なので、ラブホテルから出入りしている写真を3回以上撮る」という、なんともリアルな法律に関わる部分までが、登場人物のセリフにより生々しくも自然に描かれていくのだ。
また、弁護士費用や法的に支払わなければいけない金額などが具体的な数字で描かれており、かなり学ぶことが多い。
正直、これまでの不倫マンガではあまり描かれていなかった部分に思える。
実際、浮気や不倫をされた際は、どうしても先に感情が動いてしまうだろう。悲しみ、憎しみ、虚無感。どの感情も自分の理性を壊してしまいそうなレベルのものだ。
しかし、この作品では着実に“サレタガワ”が戦うために必要となるものが順を追ってしっかりと描かれている。
不倫されていることを知りながらもその現場をまだ十分に押さえられていないことから、我慢するシーンは胸が張り裂けそうな気持ちになるが、実際に事が起こった時には自分もこう行動すべきなのかと思い知らされた。
感情をこれでもかというほど揺さぶられる作品でありながらも、その感情を冷静に保つ事が“サレタガワ”として時に必要であることがリアルに描かれているところは、これまでの不倫マンガやドラマにはない魅力だと感じる。
『サレタガワのブルー』から得る不倫のリアルと学び
現在連載中のマンガMeeでは第2章として、不倫後のそれぞれの人生が描かれている。
不倫漫画やドラマでは不倫の末路を描いたバッドエンドで締め括られる事が多い。今作は現実と同じように、“不倫”や“離婚”が人生の1つの通過点として、“シタガワ”と“サレタガワ”、その周囲の人間が、それぞれの道を歩んでいく離婚後の様子が、おまけのようなアフターストーリーではなく、しっかりと描かれているのだ。
それもこの作品が、よりリアルであり続け、支持され続けている理由だろう。
現実は「不倫されました」「離婚しました」「おしまい」では終わらない。都合が良いところでストーリーは終わりを迎えてはくれない。“サレタガワ”の人生はそこからも続くのだ。
浮気や不倫をされた側の悲しみや苦しみは、別れることで拭えるものではない。終わりを迎えた後も、完全には拭いきれることはなく、緩やかに首を絞めるように、心に残り、いわばトラウマになるのだ。
人を好きになることは自由であるし、安定よりも、刺激を求めてしまうこともあるだろう。
しかしそれは、愛した相手への半永久的な苦しみを与えてまでもすることなのか。周囲を巻き込み、信頼や仕事、大事なお金を失ってでも関係を持ちたい相手なのか。
思わず目を背けたくなるほどリアルに描かれているからこそ、冷静に自分と向き合わざるを得なくなるこの作品は、私たちに多くの学びを与えてくれる。
あっという間に引き込まれて飲み込まれるほどの作品の世界観と、冷静さを与えてくれる学び。これまでになかった新しい“新感覚不倫人間ドラマ”だからこそ、多くの人の心を掴み、離さないのだろう。
作品情報
サレタガワのブルー
セモトちか
集英社マンガMee(https://manga-mee.jp/)にて配信中
https://manga-mee.jp/trial_reading/sareta_002/trial_001.html
文/瑞姫