『サレタガワのブルー』の魅力②:個性的なキャラクターへの感情移入
今作の主人公は“サレタガワ”である夫・暢だが、“シタガワ”である妻・藍子や不倫相手の上司・和正、その妻・梢などキャラクター一人一人が個性的で、それぞれの視点での物語が繰り広げられるところも魅力だ。
例えば、暢はハイスペックでイケメンで愛妻家という絵に描いたような“理想の結婚相手”なのに、妻・藍子は浮気をしていることに対して何の罪悪感も感じていないという、清々しいほどに恐ろしいキャラクター。
浮気を疑われた際には「私が浮気なんかするわけないでしょ?」と涙をこぼし、挙げ句の果てには夫へ責任転嫁。
暢の友人に浮気がバレていることを指摘されても、「のぶくんは 私のこと 失いたくないだろうから 絶対に深くは責めてこないの だから 大丈夫」と悪びれもせず笑い、挙げ句の果てには「のぶくんはね 私にとって「白ごはん」なのよ 安定の毎日食べたい 主食。」とあっけらかんと説明し、読み手をドン引きさせる。
怒りの矛先を向けることをためらわせない悪女っぷりと、予想を超えるモラルフリーな言動の数々は憎らしくも目が離せない。思わず「早くこの女に天罰を与えてくれ!」と拳を震わせてしまうことが何度かあった。
逆にサレタガワの梢が、より有利な条件で離婚できるよう動き出すや行動をとるなどに姿は思わず応援したくなる。
浮気が発覚した当初、ショックを受けながらも、自身のタブレットと和正のトークアプリを同期し、リアルタイムで会話をチェックするなど冷静に行動。
未就学児の子どもをワンオペで育てる専業主婦にとって、離婚というハードルが、とてつもなく高いことも描かれているが、それでも夫から何とか離れて子どもを育てようとする強さには勇気を貰える。