受診のタイミングと適応障害の診断基準は

――医療機関を受診するべきタイミング、またどの科を受診すればいいかを教えてください。

田近医師:学校や会社のことを考えると不安になる、気分が落ち込む、行くと症状が悪化する、など日常生活に支障が出ている場合は、早めに精神科、心療内科、メンタルクリニックを受診しましょう。

――適応障害の診断基準とはどういうものですか。

田近医師:アメリカ精神医学会が2013年に公表した「DSM-5(精神障害の診断・統計マニュアル)」にある次のことに基づいています。

A.はっきりと確認できるストレスに反応して、3カ月以内に症状が出現。
B.次の1・2のうち、少なくとも1つの症状がある。
「1.ストレスの原因に対して不釣り合いな症状や苦痛」
「2.社会的、職業的に重大な機能不全が起きている」
C.ほかの精神疾患では説明ができない。
D.身近な人を亡くした時の反応(死別反応)ではない。
E.ストレスの原因が消失すると、6カ月以上症状が続くことはない。

つまり診断のポイントは、「ストレスの原因が明確で、それに反応して症状が出ており、そのために日常生活に支障が出ていること」です。

ストレスを取り除く・減らす

――五月病のセルフケアの方法はありますか。

田近医師:何よりも、ストレスの原因を取り除くことが重要です。例えば職場で問題がある場合は、会社のしかるべき部署や上司、産業医に相談しましょう。ひとりで悩まず、家族や友人に相談して客観的な意見を聞き、場合によってはフォローしてもらうことも重要です。

うまく異動できて現実問題が解決することで、すっきりよくなるケースは多くあります。また、テレワークが普及してきた昨今、出社が難しくとも、テレワークに変更してもらうことでうまくいく場合もあります。

しかし、現実問題が、そう簡単には解決しないことも多いでしょう。症状が強くて出社が困難な場合、メンタルクリニックでは一定期間の休職が必要という診断になるケースがあります。その場合は診断書を会社に提出し、ゆっくり休んでください。ストレス環境から離れるだけで、ある程度、症状は軽減すると思われます。

気持ちを落ち着かせるのに薬による治療が有効なこともあります。そうして落ち着いた状態にもっていったうえで、前述のような対応を考えていきましょう。その仕事や会社が本当に自分に合っていないと思えるのであれば、転職もひとつの選択肢となるでしょう。