自分で自分を守るためのマニュアル
かつては川崎・堀之内や吉原などで接客をしていた経験もある元・講習師の山本よしのさんに話を聞いた。
「基本は挨拶から手順、椅子やマットでのプレイなど実技に関する内容ですが、私はあえて手書きでイラストも入れてマニュアルを作って渡していました。風俗嬢としての心得をきちんと伝えたかったからで、講習では『自分で自分を守るんだよ。著しく不潔なお客様にはしなくてもいい方法を講習するから』と教えていました。そのような講習師の思いと経験が詰まったマニュアルを実践し、技を磨いてプロに徹すれば、お客様は敬意をはらって遊びに来て下さるんです。そして客層もどんどん良くなっていくんです」
だが、そんなよしのさんでも、危険な目に遭ったことがあるという。
「かつて私も、出勤前に店の目の前で男性客に肩を刺されたことがありました。3回ほど来てくれていたお客で『お店に行った時に優しくしてくれたから、きっと、一緒に死んでくれるはずだと思った』と、警察で言ったそうです。私には記憶に薄いお客さまでしたが、私を道連れに死のうと思ったようです。また、妻と子を殺した男が捕まる前に店に遊びに来たこともありました」
よしのさんだけでなく、このような危険な目に遭った風俗嬢は少なくない。吉原、川崎堀之内などで風俗歴15年になる女性はいう。
「以前、私の本指客で大金を使ってくれた方が、私に彼氏がいることを何らかのきっかけで知り、自宅マンションの前で騒がれたことがありました。恐ろしくなり、警察に通報したら、男はナイフを隠し持っていて『刺すつもりだった』と。私はすぐさま引っ越しましたが、引っ越す前まで付き纏われて怖かったです」
前出のよしのさんは言う。
「風俗でのサービスは男性の肉体だけでなく感情にも訴えかけるものなので、もちろんそれを勘違いした男性が過剰な行動に出るという危険は付きまといます。でも、だからと言ってそれを“色恋営業の成れの果てだ”と片付けられると悔しいし、悲しいです。
今回のようなことが二度と起きないように、業界全体でセキュリティを高めてほしいし、何よりお客様側にも風俗嬢に対する敬意を持って遊びに来てほしいと思います」
女性を刺した男は自身の腹も刺し、回復まで10日ほどかかる見込みだという。警察は男の回復を待って捜査を進める方針だ。
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取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班