「おじさん叩き」が及ぼす社会的影響
高級品を身にまとい、金銭的な余裕があり、パパ活で若い世代と触れ合う機会を持つようなおじさんは、実は多くない。
「私が懸念するのは、おじさん叩きによって、どこにでもいるようなおじさんや社会的弱者のおじさんが委縮してしまい、日本の社会全体が活気を失ってしまうこと。
人は年をとれば、少し太ったり、髪が薄くなったりするもの。体臭も自然にあるものですよ。
男性のスキンケアや体毛処理が若年層に広がってきています。清潔な若い男性との対比でおじさんが不潔な存在として扱われることも……。おじさんが生きづらい時代ですよ」
こうした状況下に息苦しさを覚えていても、声を上げづらいことも問題だという。
「おじさんは、たとえ辛くても、私たちはそんなに強くないんだ、弱者なんだと言えないんです。
傷ついたと口にすれば、弱さを認めたことになり、それが耐え難い屈辱に感じられてしまう。だから、ひたすら耐えるしかない。世代的に『男らしく』の呪縛にかかっているのです。
私は今47歳で『男性学』を研究していますが、少し前までは自分の専門分野を誰かに説明するのが少し恥ずかしかった。自分自身が、社会が求める男らしさに適応できていない存在だとすんなり受け入れられなかったんです」
“レッテル貼り”によって本質が見えなくなる。おじさん叩きはその象徴ともいえる問題だ。
「誰もが生きるのに必死な時代。世の中、大多数のおじさんは権力もなければ、お金も大して持っていない、LINEで絵文字を送る相手もいない。
新年度で新たな出会いがたくさんあると思いますが、『おじさんはこうだ』とか『女性だからこうだ』と決めつけず、目の前の相手と向き合い、年齢や性別などの属性にとわられずいい関係を築いていってほしいと願っています」
取材・文/小林 悟
企画・編集/一ノ瀬 伸