イノベーションを起こすのは「正しい知識」がカギになる
——本書のクライマックスでは、産学連携でイノベーションを起こすための「架け橋」に関する記載があります。ビジネスパーソンがこの「架け橋」になるために、まずは何から始めたらよいでしょうか。
まずは、正しい知識を多く吸収することから始めてはどうでしょうか。
研究者は、誰も行っていない研究に取り組んで結果を出すのが仕事なので、とにかく日々リサーチをしています。日常的に学術論文を読むのは当たり前ですし、数日に1回は興味のある分野で最新のデータが公開されていないかを調べています。といってもそんなに多くの時間は割くことはできません。効率よく情報収集する必要があります。
おすすめは、その事業に必要なデータや周辺知識について「英語で」検索することです。日本語で検索すると、当然ながら日本国内のデータか、誰かが翻訳したタイムラグのあるデータしかヒットしません。その時点で情報が限定されてしまいます。
新しい価値を生むような最先端の話題は、英語で調べないとキャッチしにくいでしょう。最近はGoogle翻訳などの翻訳ツールも発達しているので、海外の文献もかなり読みやすくなっています。
また、論文を検索する際には「その論文が正しいかどうか」も同時に考えてほしいです。最近は研究費の獲得を目当てに、十分に精査されていない論文を集めた困った論文雑誌があります。仲間内では、こうした論文を掲載する雑誌を「ハゲタカ・ジャーナル」と呼んで、注視しているんですよね。
誤った論文を元に製品やサービスを作ってしまうと、結果的に自社やお客様が不利益を被る可能性があります。他の研究者の査読(さどく)が付いていなかったり、内容に疑問を感じたりする論文があったら、ぜひ周囲のメンバーや研究者などと妥当性についてディスカッションする必要があると思います。