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理系の知識、ビジネスに活用できていますか?

——はじめに、ビジネス小説『なぜ君は、科学的に考えられないんだ?』を執筆しようと思った経緯を教えていただけますか。

私は国立大学で研究者として従事し、研究室に所属する学生への指導も行いながら、小説家としても活動しています。

昔から本が好きなのでよく書店に行くのですが、平積みにされているビジネス書を読んだときに「学術書と違って、内容があいまいだな」「この理屈は筋が通っていないから、イメージが湧きにくいな」と思うことが多々ありました。

ならば、研究者が日頃から使っているロジックを活かした小説を書いたら、面白いかも……。そんな着想から、このビジネス小説は生まれました(松尾佑一氏、以下同)。

——物語は、ある化粧品会社に所属する「山田咲良」と、研究者の「斑目教授」との関わりを中心に進んでいきます。松尾さんも実際に、企業の担当者とやりとりすることはあるのでしょうか。

最近は、企業と大学の研究室とが連携する「産学連携」が増えていますよね。私も民間企業から技術相談を受ける機会があります。

「理系は賢いからいいよね」は本当? 文系サラリーマンの情報リサーチやプレゼンにも役立つ理系研究者の知識とは_1
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研究者の力や知識を必要としてくれるのは、とても嬉しいことなのでしっかりと協力したいのですが、企業側しか知らないけれども提供されない情報が多かったり、分析に必要なデータがなかなかもらえなかったりすると、少し困ってしまうことも。

でもお互いに悪気はないはずなので、コミュニケーションを円滑にして、うまく連携できたらいいですよね。実はそんな思いを本書の登場人物に込めています。本書では「町村」という人物が悪役のポジションで出てくるのですが、彼には彼の論理や美学があるのでどこか憎めないところもあるのです。

また、この小説では、現実にある学術論文や企業の報告書を引用しています。だからこそ実際のビジネスシーンにも活かしやすいのではないでしょうか。