アメリカで全く売れなかったゲノム編集の食品に
日本は予算をつけている

また、補助金の噂について尋ねてみると山田氏はこう話す。

「ある国立大学でコオロギのゲノム編集の研究を行っているけど、その研究所にはコオロギ食品で有名な企業のCEOが講師として名を連ねています。この研究に対し国の予算がけっこう使われているはずです(※この企業は『コオロギだからといって多額の補助金が別途出ることはありません』と回答)。
ゲノム編集というのは狙った遺伝子を意図的に変化させる技術ですが、まだ未知の部分が多すぎて安全とは言い切れません。2年前に私がアメリカに行った時にある会社がゲノム編集の食用油を売りだしていましたが、今ではその会社の株価が10分の1に下がって、最終的にその食用油は販売中止になっていました。
ゲノム編集の食品ってアメリカでは全然売れないんです。そんなものに日本は今、予算をつけてどんどん取り入れようとしているわけです」

ゲノム編集や遺伝子組み換えの危険性については山田氏がプロデュースして撮影されたドキュメンタリー映画『食の安全を守る人々』でも触れている。

「40年前、遺伝子組み換えの研究をやっていた方が、除虫菊の遺伝子をトウモロコシに入れる実験をしたところ、トウモロコシからバラのような棘が生えてきて驚いたそうです。それにインドでは遺伝子組み換えの綿の種や農薬、化学肥料などの購入費用で借金を作ったり、健康被害などに遭った方が20万人以上自殺しています。
かつては遺伝子組み換えの農産物で世界の飢餓を救うと言っていましたが、FAO(国連食糧農業機関)の統計でも結局、人類を飢餓から救っているのは昔ながらのその土地にあった在来種が中心ですよね。だからやるべきはゲノム編集とか遺伝子組み換えとか昆虫食とかっていう話ではないんですよ」 

〈コオロギ食論争に元大臣が警鐘〉「私は食べるべきではないと思っています」元林農水産大臣・山田正彦氏(80)が語るコオロギ食が“ヤバイ理由”とは…_3
取材に応じる山田元農水大臣(撮影・集英社オンライン)

世界的な食料危機のためと昆虫食やコオロギ食は推進されているが「それは建前で実態はまるで違う」と山田氏は主張する。

「多国籍企業のお金儲けのためというのが背景にあると思いますよ。種子法廃止の時に、ある化学メーカーがすすめていた米は、農家との契約書を見たら米の指定された農薬と化学肥料はセットなんです。だから日本の農家から『米の種、農薬、化学肥料』の3点で儲けようとしているビジネスモデルなんです。
ちなみにこの化学メーカーの米の価格は『コシヒカリ』の10倍です。それと同様に多国籍企業がお金儲けのために、昆虫食とかゲノム編集と言っているのだと思います。本当に安全な食品を、それこそSDGsと言うのであれば昆虫食やコオロギなんかじゃなくて、同じたんぱく質なら補助金を出して遺伝子組み換えじゃない国産大豆に頼るべきだと思います。それで十分まかなっていけるはずです」

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コオロギパウダー
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「できればみんな、日本のおいしいお米や野菜などを食べたいでしょう」と山田氏。ただ2018年4月に種子法が廃止され、食の安全に危機が迫っているという。

「戦後、米や麦、大豆の安定供給を国が果たすべき役割としていた種子法が廃止されました。私たちはそれを違憲だとして訴訟しています。戦後初めて憲法で保障された食の権利と、安全なものを持続的提供安定して提供を受ける権利について主張していて、3月24日に判決が言い渡されます。今、日本はコオロギを増やしていくとか昆虫食とかそんなことをしている場合ではありません」

そう力強く断言する山田氏は、今後も「安全な食の権利」のため闘い続ける意欲満々だ。

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取材・文 集英社オンライン編集部ニュース班