女性作家に肉体関係を迫る著名キュレーター

具体的な被害を本書から一部抜粋して紹介しよう。

グループ展に参加していた大学院生につきまとい行為をするA氏は、若手作家を応援するコレクター。

コレクターと美術家の関係を越えて距離感を詰めていき、下の名前で呼んだり、大学院に突然押しかけてきたりした。

さらに、自宅や実家の住所を問い詰め、しつこく食事に誘うなどつきまとったという。

ある日、A氏の行動を不審に思ったギャラリーオーナーに助けられ事なきを得たが、A氏は典型的なギャラリーストーカーである。

「僕なら有力な批評家やコレクターを呼んであげられる」著名キュレーターが若手女性作家をホテルに呼び出し、肉体関係を迫り、暴言を浴びせ…日本の美術界にはびこる「ギャラリーストーカー」の闇_2
『ギャラリーストーカー 美術業界を蝕む女性差別と性被害』(中央公論新社)

また、地方の大学院で絵を学んでいた女性は、国内外で活躍する著名なキュレーターから、「僕なら有力な批評家やコレクターを呼んであげられる」と告げられた。

軽いボディタッチから始まり、男性の行為は次第にエスカレート。具体的な展示の相談をするために1対1で会う機会が増えていくと、呼び出される場所がカフェやレストランでなく、ホテルへと変化。

肉体関係を迫られ、断りきれずに一線を越えてしまうと、男性の態度が図々しくあからさまになっていった。女性が拒絶すると暴言を浴びせられ、精神的に追い詰められていった。

自身の立場を利用し、展覧会開催と引き換えにセクハラ行為に及ぶ悪質なケースだ。

上記以外にも数多くの驚くべき実態が本書では明かされている。