営農の力が生んだ「福島の奇跡」

水田はどうだったか。菅野さんの田の土壌には1キロあたり3000ベクレルのセシウムが含まれていたから、玄米から300ベクレル検出されてもおかしくない。

実際は、わらと籾殻からは50~100ベクレル検出されたが玄米は不検出だった。2015年にはわらも不検出になった。

東和町の農家に協力してきた研究者はこう分析した。

長年稲わらや堆肥を投入してきた結果、放射性セシウムを固定する腐植含量と、作物への吸収を抑制するカリウムが供給されていた……。

「肥沃な土づくりに励んできた農民たちの力だ。この地に踏みとどまったお年寄りたちの営農の力だ。福島の奇跡だ」

研究者のひとりはそう評価した。

布沢集落では原発事故から2年後の2013年には全員が米づくりを再開した。

【震災12年】「若い家族は戻ってこない。そんな村に未来があると思いますか?」いまも山菜は高濃度…放射能汚染と闘う農家が起こした「奇跡」と、取り戻せない風景_4
田植えをする菅野さん
【震災12年】「若い家族は戻ってこない。そんな村に未来があると思いますか?」いまも山菜は高濃度…放射能汚染と闘う農家が起こした「奇跡」と、取り戻せない風景_5

だが、東和全体では10年たっても半分近くは耕作していない。一度耕すのをやめると雑草が繁茂し、放棄してしまう人が多い。

セイタカアワダチソウの黄色い花が田をおおい、そのうち柳の木が生えて根を張ってしまう。そうなったら水田にもどすのは難しい。