犠牲にするものは少なく、QOLが爆上がり
翌2021年2月、一家は晴れて那須塩原市民となった。
最初は賃貸マンションに暮らしたが、家賃は豊島区時代の約14万円から7万円へと、大幅なコストダウンとなった。
2022年11月に掲載された内閣府のHP( 第1章 第3節 テレワーク等による地方への新たな人の流れ - 内閣府 (cao.go.jp))に、「地方圏へ住み替えた場合のコスト試算」が出ている。それによれば、リモートワークにより東京の仕事を続けながらの住み替えによって、物価や住居費が安くなることや、通勤時間短縮による効果などで、年間153万円(1カ月12.8万円)程度の経済利益が得られる可能性があるそうだ。決して少なくない金額だ。
実際に移住してみての住み心地について、タケシはこう話す。
「仕事をはじめ、犠牲にするものは少なく、QOLは爆上がりです。近所に大きな公園や牧場があり、家族でよく散歩します。混雑がないので、思いつきで気ままに近場の観光地や温泉にドライブに出かけられます。東京にいる時は事前にスケジュールを組んで予約して行ってもどこも混んで行列で。こちらは『今日だめならまた明日、来週行けばいいね』と、行動の自由度が大きいです」
東京出身のタケシにとって、退屈だと感じることはないのだろうか。
「全くないです。移住を真剣に検討していた2020年の『都道府県別魅力度ランキング』で栃木県は47位ですが、ああいう見せかけのランキングはあてにならないことがよくわかりました。
昨年、仕事で東京に出向いたのが計10回程。たまに行くと高層ビルを見上げて『東京ってキラキラしてるな』とは思いますが(笑)、ずっといなくてもいいかな。長く東京に住んでいたから、田舎のよいところを見つけやすいのかも。ここはいざとなればすぐに東京に行けるし、食べ物も美味しいし、生活に必要なものも揃うし、バランスが取れたちょうどいい場所だと満足しています」