「もし平和を望むのなら、戦争に備えなさい」との格言

取材では、多くの後悔の声が聞こえてきたが、子どもたちまでも、不安に襲われながらも、自分たちがどうすべきだったのか深く考えていたのが印象的だった。そして彼らに「日本に何かアドバイスはあるか」と聞くと、じつに様々な答えが返ってきた。

「日本だっていつ攻められるかわからないのだから、備えるべきだ」「他国との同盟や外交努力をすべき」「食糧供給などを見直すべき」「政府に泣きつく前に、自分たちの領土を守るという強いコミュニティを持つことだ」「今こそ台湾を支援することが大事ではないか」「北方領土を取り返したほうがいい」……

イルピンで市議をするエフゲニヤ(40歳)はこんなことを話していた。

「ウクライナには、『もし平和を望むのなら、戦争に備えなさい』という格言がある。平和を望むなら、平和を守るための戦争に備えなければいけない。もちろん戦争なんて起こらないことが一番ですが、平和を守るためには有事に備えるべきです」

私たちが受けてきた平和教育とは、まずは太平洋戦争時に、「日本が戦争を始めてしまった」ことへの反省があり、次にどうすれば戦争をしない国になるか、であった。しかし、時が経ち、それは「アメリカの戦争へ巻き込まれないこと」に変わり、現在は、「他国から攻められないこと」に変遷していった。

日本は台湾有事がもし起きてしまったら、巻き込まれ、最悪の場合、攻められる可能性だって予測される。だからこそ、ウクライナの人々の「自国を守るための後悔」には耳を傾けるべきではないだろうか。


取材・文/たかまつなな(笑下村塾)