蜷川さんは自己肯定感を上げてくれる人
――映画『ホリック xxxHOLiC』は『Diner ダイナー』(2019)、ドラマ『FOLLOWERS』(2020)に続いての蜷川実花作品参加となります。出演が決まった経緯を教えてください。
蜷川さんが『ホリック xxxHOLiC』を映画化するということはなんとなく聞いていて、「ひまわりちゃん、どうかな?」って感じで事務所を通してお話をいただいていたんです。蜷川さんは10年くらい構想を温めてきたそうなので、それほど思い入れの強い作品に携われたことはうれしかったです。撮影は2020年のコロナ禍に行われたので、私にとっては1度目の緊急事態宣言が明けてから初めての作品になりました。
――CLAMPさんの原作『XXXHOLiC』は知っていましたか?
もちろん有名な作品であることは知っていましたが、読んだことはなかったです。出演が決まってから読みましたが、まず最初の感想は「頭身がやばい」でした(笑)。ひまわりは10頭身ぐらいあるので、ビジュアルを完全に再現するのはムリだなって思いました。原作をそのままトレースしないのが蜷川作品の良さですしね。
――演じる上で監督からのリクエストは?
今まで演じた中で一番明るいキャラクターだったので、蜷川さんからは「普段のティナの10倍明るく、10倍かわいらしく」と言われました。私自身が暗いというわけではなく、普段は無理をしないスタンスなので(笑)。原作のひまわりのかわいらしさを壊したくないと思いましたし、そこは意識しましたね。ひまわりは人に言えない悲しい秘密を抱えているキャラクター。そのことを取り繕ってわざと明るく見せている部分もあるので、不自然なくらいキュルンと演じました。
――具体的にはどうやって?
直線的に立たずに体のラインにウェーブをつけたり、至近距離で人の顔を覗き込んだり。あとは声のトーンをいつもより上げました。完成した作品を見たときはちょっと恥ずかしかったけれど、今回はCGがたくさん使われていて、演じているときには想像するしかない部分も多かったので、でき上がった映像を見て「あっ、すごいな!」と思いました。
――監督はどんな方ですか?
蜷川さんは下の世代のがんばっている人たちにエールを送ってくれる方ですね。私たちの関係性は、『ホリック xxxHOLiC』で神木(隆之介)さんと柴咲(コウ)さんが演じられた四月一日(わたぬき)と侑子の関係にすごく似ているかもしれません。
まだ地元の沖縄に住んでいた14歳の頃に、蜷川さんが編集長を務める『Mgirl』という雑誌で撮影をしていただきました。その頃からずっと自分のことを見てくれている人がいるということはすごくうれしいです。
約2年前に私を『Diner ダイナー』のヒロインに抜擢してくださったのですが、そのことは蜷川さんにとって大きな決断だったと思うんです。もちろん、配給会社にとっても(笑)。私の見えない可能性を信じてくださったことは自信につながりました。
――監督から刺激を受けたことは?
プライベートでも相談をすることがあるのですが、一度も「こうしたほうがいいよ」と言われたことがないんです。「そのままでいいんじゃない」と、無理に人を変えようとしないところが素敵だし、自己肯定感を上げてくれる。相談できる年上の女性が今までいなかったので、東京のお姉さんみたいな存在です。