500ユーロ札で運ぶのが一番効率的

収容者が様々な自由を得るには、収容所内でも現金が必要だ。それが職員たちの懐を潤していたのだ。面会に来た者が金を受け渡ししようと問題になることはなかった。

指示役の1人とみられている渡辺優樹容疑者は、交際していた女性を運び屋にしていた。女は現金2000万円を持ち出し渡辺容疑者に渡していたことがわかっている。2000万円を現金で運ぶとなると、1万円札ではかなりかさばってしまうし重い。プリペイド式の電子マネーを購入して運ぶにしても同様だ。

〈連続強盗犯指示役・帰国〉運び屋暴力団関係者が明かすビクタン収容所の驚きの実態。「職員は実はエリート。働いていれば年収の3~4倍の袖の下が…」_5
近く送還予定の渡辺優樹容疑者(下)と小島智信容疑者
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ある暴力団の幹部は「信用できる運び屋なら、運ばせるのは電子マネーより現金。そこで使われるのは“ユーロ”だ」と話す。
「一番高額のユーロ紙幣は500ユーロ札。それを使う。1ユーロを145円とすれば、500ユーロ札1枚で72500円。100枚で725万円になる。2000万を現金で運ぶ場合、500ユーロ札なら280枚ほどですむ。マチ(収納力)のある財布ならたやすく入る。一万円札で考えないことだ」

円からユーロ、ユーロから現地通貨やドルに換えるには手数料がかかるが、他の方法で換金するより換金率は高く手間もない。前述した暴力団関係者同様、幹部がフィリピンに現金を持ち出した時は、円を500ユーロ札に換え、長財布に入れて持ち出したという。

「フィリピンなら日帰りしようと思えば日帰りできる。荷物も最小限なら、空港税関の荷物検査で引っ掛かることもない。金を自分の財布に入れていけば、税関も財布の中まで調べはしない。数百万を持ち出すのは簡単だ」

日本人的尺度や感覚では到底理解できない世界がそこにはあるようだ。

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取材・文/島田拓 集英社オンライン編集部ニュース班