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弱冠22歳で120人の組織をまとめる難しさ

――現在、廣瀬さんは「株式会社HiRAKU」を起業し、次世代のリーダーを育成するプロジェクトに従事。五郎丸さんは所属する静岡ブルーレヴズのスタッフという立場を越え、日本ラグビーの顔として、ラグビーの普及活動にたずさわっています。おふたりのなかで、大学ラグビーでの経験は現在にどのような形で生きているのでしょうか。

廣瀬俊朗氏(以下、廣瀬)大学時代にキャプテンを経験して実感したのは、弱冠22歳の若者が120人もの組織をまとめる難しさです。当時強豪だった関東学院大や帝京大では、高校時代に活躍した選手がたくさん在籍していて、部員みんなが日本一を目指すというモチベーションを持っていたはずです。

それと比べると慶応はバックグラウンドの異なる選手たちで構成されたチームでした。自己推薦の制度はあったものの、スポーツ推薦は厳密には存在していない。慶応高校からの内部進学者が多いですし、一般入試を経て入部する人もいる。本気で日本一を目指す選手も、そうでもない選手もいれば、裕福な家庭で育った人も普通の家庭の人もいる……。

キャプテンに就任したときに悩んだのは、モチベーションがばらばらな選手をまとめるために、どのような目的を設定すればいいかということでした。チームについて、仲間について、そしてラグビーについて、とことんまで考えた1年でした。本当に貴重な経験だったと思います。

廣瀬俊朗氏。2016年に現役引退し、現在は株式会社HiRAKU代表取締役として、ラグビーに限定せずスポーツの普及、教育、食、健康に重点をおいた様々なプロジェクトに取り組んでいる
廣瀬俊朗氏。2016年に現役引退し、現在は株式会社HiRAKU代表取締役として、ラグビーに限定せずスポーツの普及、教育、食、健康に重点をおいた様々なプロジェクトに取り組んでいる
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五郎丸歩氏(以下、五郎丸) その気持ちはとてもよくわかります。私の場合は幸運にも早稲田が強かった時代にプレーさせてもらいました。私が在籍した4年間では、練習試合も含めて大学生相手には2回しか負けなかった。でも、そんな勝利が当たり前の環境だからこそ、上級生になったときには難しさも感じました。部員は120人から140人もいますが、すべてをラグビーに賭けている選手もいれば、そうではない選手もいます。

当時の早稲田は、日本選手権で社会人のチームに勝利するという目標を掲げていたんですが、そのためにも私が4年生のときのチームは、意欲の高い選手だけを引き上げて、とにかく勝ちにこだわっていこうとしたんです。そうすれば、結果的にボトムアップを図れるのではないか、と。ただ、勝利という結果を求めるあまり、少し柔軟性に欠けた組織運営をしてしまったのかなと思うことがあります。