「幸せが崩れるって、こういうことなんだね」

事件当時、被告は甲府市内の定時制高校に通う19歳の少年だったが、翌年施行された改正少年法では18歳と19歳を「特定少年」と規定し起訴後の実名報道が可能になり、検察が実名公表を初適用するケースとなっていた。

遠藤被告は一方的に好意をつのらせていた高校の後輩女性(長女)の自宅に侵入して、その両親を殺害、妹(次女)をナタで切りつけて大けがを負わせ、姉妹は命からがら脱出していた。被告自身は母親の再婚相手の義父に虐待を受けて育った経緯もあり、昨年10月からこれまで21回に及んだ公判では、被害者の調書や証言による生々しい事件の再現、被告の二転三転する供述内容などが明らかにされてきた。

全焼した被害者の自宅(近隣住民提供)
全焼した被害者の自宅(近隣住民提供)
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第7回公判では放火にあった姉妹の供述調書が読み上げられ、2階から逃げ出す状況などが鮮明に浮かび上がった。これによると、2階で寝ていた長女は、遠藤被告にナタで襲われた次女に危険を知らされ、「隠れても見つかる」と思い、妹と一緒に1階の窓の上に足をかけて飛び降りた。長女は携帯電話で110番通報しながら裸足で走った。公判で示された通信記録では「落ち着いて」と呼びかける警察官に「お父さんとお母さんは家で殺されちゃったかもしれない」と助けを求めていた。

約500メートル離れたコンビニにたどり着いて警官の到着を待つ間、妹は姉に「幸せが崩れるって、こういうことなんだね」と言ったという。次女はこの間も出血が止まらず死を意識したが「お姉ちゃんを残して死ねない」との一心だったといい、その後の日々について「今でも時間が空いたときや、夜に暗くなってきたときなどは、また襲われるのではないかと寝られない。犯人が存在しなければよかったのに」と語ったという。