自民党内最大の100人規模を誇る安倍派。だが、所属議員が「安倍さんのように最大派閥をまとめるリーダーシップがあり、カネ集めもできる人はいない。誰が会長になっても、安倍さんと比べられるし、派内の不満がたまる」とこぼすように、衆目一致する会長候補がいないのが現状だ。
安倍派の有力な「5人衆」は、松野官房長官、萩生田政調会長のほか、西村康稔経済産業相、高木毅国会対策委員長、世耕弘成参院幹事長だが、いずれも“会長就任”となると決定打に欠ける。
西村氏は、地元で使う車のナンバーを『2025年までに総理になる』という決意を込めて『2025』にするほど、首相の座への野心を隠さないが、「24時に平気で『急ぎません。朝までに仕上げてください』と官僚にメールを送るようなパワハラ上司」(中央省庁の官僚)で、党内でも待望論は少ない。
〈安倍派新会長いまだ決まらず〉「下村さんが認めないなら、5人で派閥を出て行こうか!」下村・塩谷vs5人衆…はたして安倍派分裂はあるのか?
「国葬までには」「年内までには」「一周忌までには」…こう言われ続け、ついに一周忌を終えても、安倍派の会長が決まらない状況が続いている。7月20日には幹部会合で新会長選出について話し合う予定だったが、議論がまとまる見通しがつかず、延期された。当面、松野博一官房長官、萩生田光一政調会長らによる集団指導体制にしたい「5人衆」と、5人衆の動きに反発し、新会長選出を主張する塩谷立・下村博文両会長代理の溝が埋まっていない状況だ。ついには「派閥を出て行こうか!」と言い出すベテラン議員も現れて……。
統一教会問題がくすぶる萩生田氏、西村氏は「2025年までに総理になる」…

五人衆の一人、西村氏(本人Facebookより)
一方、萩生田氏に関しては、安倍派に大きな影響力をもつ森喜朗元首相が北國新聞のインタビューで「力を付けてきた。大したもん。総合力は最も高い」と評価。事実上、会長に推されたとみられていた。
そこに「待った」をかけたのが、高木毅国対委員長だ。高木氏は「統一教会問題もあるし、東京都連会長として、次期衆院選に向けた自公の選挙協力解消を止められなかった。今、会長になるのはダメでしょう」と森氏に伝えたのだ。
だがその高木氏も派閥会長としては迫力に欠ける。
「国対委員長としても力不足で、御法川信英国対委員長代理や、前国対委員長だった森山裕選挙対策委員長の方が、よっぽど野党とのパイプもあり、交渉もできる。誰も総裁候補として考えていない高木氏を会長にしても、他派閥からなめられる」(全国紙政治部記者)。
松野氏は、官房長官という立場にある以上、100人規模の派閥の会長になることは考えづらい。
世耕氏は参院安倍派のとりまとめ役だが、「参院安倍派で内密に研修旅行に行くなど、囲い込みが露骨だ」(安倍派の衆院議員)と派内からは批判の的となっている。

五人衆の一人、世耕氏(本人Facebookより)
「すぐに自分の総裁選出馬を模索」で安倍氏を激怒させた下村氏
こうして「会長として衆目一致する人物がいない」(安倍派の衆院議員)状況の中、5人衆が出した結論は「5人衆による集団指導体制」。だが、その案に反発しているのが、塩谷立・下村博文の両会長代理だ。
「塩谷・下村両氏は、5人衆よりベテラン。5人衆が派閥のとりまとめ役となることで、世代交代が進むのが嫌なのです」(全国紙政治部記者)
とはいえ、5人衆も塩谷・下村両氏に簡単に従うつもりはない。
とくに「塩谷さんのことは兄貴分だと思っているけど、下村さんのことは兄貴分とは思えない」(5人衆の1人)と、下村氏への反発は強い。

五人衆と反発しあっている下村氏(本人Facebookより)
下村氏は、人望に欠けるにもかかわらず、自分ばかり前に出ようとする動きが目立ち、安倍派の現役議員だけでなく、森氏からも信頼を得ているとは言い難い。
「安倍氏の死去後、安倍派幹部が後継の体制をどうするか話し合っていたとき、真っ先に『下村さんだけは排除しよう』となったことを森氏が雑誌で暴露していました」(全国紙政治部記者)
「下村氏は、安倍首相が辞任を表明したときに慰労の言葉もなく、すぐ自分の総裁選出馬を模索し始めて、『まずは、お疲れ様でしたと言ってくるのが先だろう』と安倍氏の怒りを買っていました」(自民党議員)
膠着状態が続くなか、5人衆の一人は「下村さんがどうしても5人衆を認めないというなら、5人衆で派閥から出ていこうか! そうしたら安倍派のほとんどが5人衆についてくるでしょ!」と鼻息が荒い。
全国紙政治部記者は安倍派の今後をこう見立てる。
「まずは、9月中旬にもあるとみられる内閣改造・党役員人事でポストを獲得するためにも、新体制を確定させたいところです。安倍氏が亡くなった直後の内閣改造・党役員人事では首相は安倍派に配慮し、松野氏を官房長官、西村氏を経済産業相、萩生田氏を政調会長、高木氏を国対委員長に就けるなど、安倍派を重用しました。しかし今回、安倍派は強力なリーダーシップをもつ人がいないと足元を見られ、重要ポストの割り当てが減るかもしれません」

故・安倍晋三氏(安倍氏Facebookより)
自民党関係者からは「歴史的に何度も分裂を繰り返してきたのが、今の安倍派です。8月20日の派閥の研修会までに決まればいいですが、会長選びで迷走し、このまま分裂してしまうのでは」との不安の声も出ている。
取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班
新着記事
1億超が当たり前、高騰し続ける「首都圏駅チカ物件」がぼちぼち一等地ではなくなるのは本当か? ロボタクシー、スペースXは普及するのか
『世界最高峰の研究者たちが予測する未来』#2
「なぜ明石市のコミュニティバスが全国トップレベルの成功を収めているのか。その答えはサイレントマジョリティの声にあります」泉房穂×藻谷浩介
『日本が滅びる前に 明石モデルがひらく国家の未来』#1
【こち亀】子どもがカード破産で、サラ金に…“おとなの世界はカードが常識”という言葉に憧れた末路
現実と仮想世界が融合するMetaの最新ヘッドセット「Meta Quest 3」先行体験レポート。話題の「Apple Vision Pro」との決定的な違いは…
最新MRゲームがサクサク楽しめる!