大阪・京橋駅を下りて徒歩8分、国道1号線沿いに現れる4階建て住宅。その縦長でやや古ぼけた建物の各階の出窓に目をやると、ずらりと並べられた……もとい、ぎっしりと詰め込まれた無数のリラックマが、天下の往来を見下ろしている。
〈リラックマ生誕20周年!〉「頭の中で私のことを呼ぶんです」“リラックマビル”のオーナーが語るその魅力。数百体のぬいぐるみを集めるようになった驚きの理由とは
“癒しキャラ”としてすっかり定着しているリラックマは今年で生誕20周年。そんなアニバーサリーイヤーに、リラックマファン垂涎のある場所を訪れてみた。
最初はお店の宣伝のつもりだったが…

大阪・京橋の“リラックマビル”
この建物には計500個以上のリラックマグッズが所蔵されており、窓から外界をのぞくこのぬいぐるみの数々はそれらコレクションの一部だ。外観のあまりのインパクトに、人々はこの建物を“リラックマビル”と呼び、京橋ではちょっとした名物となっている。
ただの住居を世にも奇妙なリラックマビルに変えてしまったのは、隣接する焼肉店「十八番」を夫とともに経営する落合ひとみさん、60歳。事の発端は15年前だった。
「部屋の掃除中にたまたまぬいぐるみを窓辺に移動させたら、向かいのオフィスビルの人がニコッと笑ったんです。それを見て『リラックマのぬいぐるみに店名の書かれたハチマキを巻いたら、宣伝になるんちゃうかなー』と、“商人魂”が出てきまして(笑)。気がつけばこんなに増えてしまったんです……(苦笑)」

2階の出窓
見たところ“ハチマキリラックマ”はいないようだが、いずれにしても本格的に収集し始めてからわずか3年で、1階から4階まで数百体のぬいぐるみで埋め尽くされたリラックマビルが完成。
窓辺以外でも室内にはあふれかえるぬいぐるみたちが。しかし、もちろんこの建物はひとみさんひとりで住んでいるわけではない。
「主人のほかに2階は祖父母、以前まで4階には子どもも住んでいましたけど、晴れでも雨でも外に出るまで天気がわからないから、子どもが『ぬいぐるみのせいで、日がまったく当たらんやんけ!』とブーブー文句を言ってきたこともありましたね。まぁ、うちで一番強いのは私なので、みんな折れてくれましたけど」
42歳で珍しく芽生えた“かわいい”という感情
リラックマに生活圏だけでなく、日の光も奪われてしまった落合さん一家。さらに「ヤマザキ春のパン祭り」とのコラボグッズが出たときには、応募券シールを手に入れるために、パンを400個も購入したこともあった。

昼間でもぬいぐるみのせいで室内に光は入らない
「自分ではそんなに食べられないので、代わりに主人に食べてもらいました。そのおかげでリラックマのお皿を10枚集められたんですけど、65キロだった主人の体重が85キロまで太りました(笑)」
それにしても、ひとみさんはなぜリラックマにここまで魅了されてしまったのか。
「学生時代は割とサバサバしてるタイプで、当時はハローキティが全盛期だったけど、私はあまり興味がなかったですね。それに少女漫画より『ドカベン』や『あしたのジョー』を読んでいたから男友達のほうが多かった。
大人になっても立ち飲み屋やサウナへ通うようなオッサン趣味で、ぬいぐるみとは無縁な人生でした。
それが18年前のある日、主人が買ってきてくれたリラックマをじっくり見てみると、目がクリクリしていて、まるで自分の子どもをみているような温かい気持ちと“かわいい”という感情が湧いてきて……」

すっかりリラックマに心を奪われた落合ひとみさん
それ以来、母の日や誕生日といったイベントがおとずれると、家族からリラックマのぬいぐるみがプレゼントされた。当初はその程度でかわいいものだったが、先述した向かいのオフィスビルにいた人のせいでこのありさまに。
そしてひとみさんの身にさらなる変化がおとずれる。
頭の中でリラックマの声が聞こえる
「初めて入った雑貨屋さんでリラックマのグッズたちが『ここにおるぞ』と脳に直接語りかけてくるようになったんです。
この前も、リラックマの青色の靴下を手に取ったら、ピンクと白の靴下が『俺らはいらんのかい!』と訴えかけてきたので、結局3足買うハメになっちゃって…(笑)。
東京駅を訪れたときなんか、どこからともなく聞こえるリラックマの声に従って歩いてたら(駅地下の東京キャラクターストリートにある)『リラックマストア』にたどりついたんです(笑)。
私は生まれも育ちも大阪だから土地勘なんてまるでないのに。あのときは本当に驚きました!」

グッズはぬいぐるみだけではない
マジなのかジョークなのかはわからないが、好きが高じてオカルトじみてきたひとみさん。そんな逸材をメディアが放っておくはずもなく、関西テレビの「よ~いドン!」(関西テレビ)の名物コーナー「となりの人間国宝さん」で取り上げられ、さらには「アウト×デラックス」(フジテレビ系列)にも出演して、キー局デビューもした。
今ではリラックマビルはファンにも知られる存在になり、北は北海道、南は鹿児島から“聖地巡礼”する人もいるそうだ。
当然、ひとみさんの頭に断捨離の文字はない。
「リラックマのぬいぐるみは私にとって空気みたいなものだから、もし窓にあるリラックマがいなくなることがあったら、私が死んだか、離婚したかでしょう(笑)。
だから、私の生存を確認する意味でも、ちょくちょくビルを見にきてくださいね」

経営する焼肉屋には「リラックマ御膳」なるメニューも
ちなみに、“本業”の焼肉屋「十八番」には「リラックマ御膳」なる趣味がにじみ出たメニューはあるものの、お店自体はリーズナブルで質の高い肉が食べられるとあって繁盛している。そこにリラックマによる宣伝効果がどの程度あるかはわからないが。
取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班
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