#2 山上徹也被告のツイートにはなぜ「女」が頻出するのか? 新自由主義とカルトに追い詰められた“ジョーカー”の全1364ツイートを読み解く に続く 

岸田首相襲撃事件の犯人は山上被告に触発された?

五野井 4月に岸田文雄首相が襲撃される事件がありましたが、その犯人(木村隆二容疑者)のツイートを分析していくと、去年の山上徹也被告による安倍元首相殺害事件に触発された部分があったと感じられました。山上被告は手製の爆弾や銃をつくりましたが、今回も手製の爆弾でした。

山上徹也と日本の「失われた30年」。彼はなぜ、“弱者切り捨て社会”において誰にも救いを求めなかったのか?_1
今年4月、岸田文雄首相を襲撃して確保された木村隆二容疑者(写真/共同通信社)
すべての画像を見る

テロや暴力を通じて政治を変えていこうとするのを許さないのは当然の前提として、山上被告はなぜあのような事件を起こしてしまったのか? それを検証することを通じて、彼の心の裡を分析し、理解し、どうすればそういう暴力に訴えようとする人が今後出てくることがない社会を構想することができるのか、という思いから『山上徹也と日本の「失われた30年」』を書きました。

山上被告は安倍元首相の殺害に「成功」してしまったので、山上被告を「英雄視」するような人も一部に見られます。そのように見られることに、木村容疑者も憧れてしまった面があったのではないか、その意味でやはり模倣犯と言うべきだと思います。

木村容疑者のツイートを見ると、方便だと思いますが、選挙に立候補するときに払う供託金(例えば衆議院小選挙区では300万円)が払える人間、あるいは世襲の人間、もしくは旧統一教会のような宗教組織が後ろについている人間のことを「既成の政治家」と呼んでいます。既成の政治家はいいですね、ジバン・カンバン・カバンが整っているから、と。

木村容疑者は中流階級の出身で、閑静な住宅街で育ったと思いますが、そういう人からしても格差の問題の存在が大きくて、自分のような「普通」の存在は政治家になれないと諦めていました。「選挙や投票では政治は変わらない」という発想がありますが、選挙期間以外でもデモや請願などで政治活動はできるのに、そうは思わなかった。
 
池田 そのようには思いもよらなかったのではないでしょうか。ところで、木村容疑者のツイッターアカウントはどうして特定されたんですか?

五野井 去年、彼は参政権(被選挙権)に関する訴訟を起こしていましたが、そういうことをしている1999年3月生まれの23歳(当時)という人は、彼しかいなかったからです。