コットン躍進の秘訣は、きょんが髪型を坊主にしたこと!? 相方・西村は慶應大卒ほか完璧すぎる経歴に「詳しくはウィキペディアを見てください」
ファイナルステージ1本目に勝負ネタをかけるか、それとも上位3組の最終決戦まで温存するか? キングオブコントに出場する芸人の多くが、その”ネタ順”に頭を悩ませている。「どちらもウケる自信はあったんで、めちゃくちゃ悩みましたね」と語るコットンの背中を押した先輩芸人のひと言とは?
コットン インタビュー♯2

コットン。東京吉本所属。2012年結成。ツッコミ・ネタ作り担当の西村真二(左)とボケ担当のきょん(右)は、ともにNSC東京校17期出身
坊主頭にして「なめられ力」が上がった

坊主頭にしたことで芸人としての幅が広がったというきょん
――コットンは今年4度目の挑戦で、今回、初めてキンブオブコントの準決勝の壁を突破しました。準決勝攻略のために何かはっきりと変えた点はあったのですか。
きょん 僕は見た目を変えました。坊主頭にしたんです。それまでは10年間くらい、おかっぱヘアで通してたんですけど、坊主頭にした瞬間、「新しい自分」になれたような感じがあって、グッと気合が入りました。
――1本目の『証拠』というネタは、浮気証拠バスターという業者の人が登場するネタで、きょんさんは女装していたんですよね。それで、きょんさんがカツラを脱ぎ捨てる場面があるのですが、坊主頭なので、なんか歌舞伎役者が衣装替えしているシーンのように見えましたね。口紅をハンカチで拭うところも。
きょん 最近すごいよく言われるんですよ。「歌舞伎役者っぽい顔だね」って。おかっぱ時代は、そんなこと一度も言われたことがなかったんですけど。
——西村さんも、きょんさんが坊主頭にしたことで、何か変わったなという印象がありましたか。
西村 芸人って、なめられる力がすごく大事だと思うんですよ。なめられ力。やっぱりいじられないとダメなので。それは坊主頭にすることで格段に上がった感じがしますよね。
きょん 相方との差別化も、よりはっきりした感じがします。
――西村さんは高校時代、野球部のエースで慶應大卒。さらにミスター慶應コンテストでグランプリと経歴が完璧過ぎますもんね。
きょん ごめんなさい! 皆さん、近づきにくいと思うんですよ。
西村 すいませんね、ほんとに。詳しくはウィキペディアを見てもらうとわかると思うんですけど。
きょん いやいや、ウィキペディアは、ほとんど嘘情報ですから。一見、完璧に見えるかもしれませんけど、隙だらけの部分もあるので。今後、そこをフィーチャーしてもらえたら、めっちゃおもしろいと思いますよ。
浮気証拠バスターの「コロコロ」秘話
――準決勝を終えたときの手応えは、いかがでしたか。
西村 これでダメだったら、もうコントはやめようぐらいに思ってたんですよ。この1年間、芸人人生の中で、これ以上はないというぐらいコントに向き合ってきたので。これでダメだったら、もうダメなんじゃないかって。
――コットンは東京のコンビとしては珍しく、漫才もコントもバランスよくこなしている印象があります。大阪へ行くと、みなさん当たり前のように両方やっていますが、東京だとそうそういないですよね。
西村 近い先輩でいったら、ニューヨークさんぐらいですかね。東京は「漫才師」か「コント師」かって、けっこうはっきり分かれるんですよね。でも、僕らは自分たちのことを漫才師とも、コント師とも思ったことがないので。芸人なんで、それはどっちもやるっしょ、っていう感じです。
――2022年はともかく、例年だと比重はどんな感じなのですか。ちょうど半々くらいですか。
西村 気持ちは半々ですけど、コントの方が結果は出ています。2019年にNHK(新人お笑い大賞)で優勝したのもコントですし、ABCお笑いグランプリで4回決勝に進んでいるんですけど、それもコント。なので、僕たちの名刺になるのはコントなんでしょうね。
――自分たちの中でもコントの方が得意だという意識が強いのですか。
西村 漫才もできるという思いはあるんですよ。(2022年のM-1の)準々決勝で負けて、こんなこと言うのもあれですけど。コントは目標というイメージ。漫才は夢ですかね。小さい頃から漫才師になりたくて、芸人になったんで。
――キングオブコントの決勝進出が決まってからのおよそ一カ月間は、どのようにして過ごしていましたか。
きょん すっごい楽しかったです。普段、あんまり話したことのない先輩とかからも「おお、おめでとう」とか声をかけてもらえたり。
西村 僕は楽しいという感覚はゼロでしたね。むしろ、苦しかった。その間、ネタのことばっかり考えていたので。ウケるところと、ウケないところの精査とか。ボケを足したりもしたので。時間があればあるだけ考えちゃうので、早くやって欲しかったですね。
――新たに足したボケとは?
西村 1本目のネタで、きょんが両手に持ったコロコロをシャーンって伸ばして、カーペットの上をそうじするところあるじゃないですか。あれはTBSの大道具チームの英知の結集なんですよ。
こういうボケがしたいんで、警棒がシャーンって伸びるイメージで、普通の傘ぐらい伸びるものを作ってくださいと頼んだんです。ワンタッチで、軽くて、グリップは握りやすくしてください、みたいな注文も出させてもらって。
試行錯誤の末、本番で使ったものは3作目でしたね。最初はすごく重かったんですけど、どんどん軽量化されていって。

「TBSの大道具さんはすごい」と語るふたり
きょん どんどん使いやすくなっていきましたね。あの伸びるコロコロは、今も家に大事に飾ってあります。
――コットンはファーストステージ2位で、最終決戦に残りました。2本目の女性ヘビースモーカーが出てくるお見合いのネタは結果的に1本目の点数を上回ります。2本とも甲乙つけがたい名作でしたが、ネタの順番はどうやって決めたのですか。
西村 めちゃくちゃ悩みましたね。どちらもウケる自信はあったんで。決まったのは結局、ネタの提出期限ギリギリでした。本番の10日ぐらい前ですかね。最後は相席スタートの山添(寛)さんの言葉で決めました。山添さんは最近、テレビではクズキャラで通ってますが、ほんまはめちゃめちゃお笑いに熱い人なんです。

「相席スタート・山添のおかげでネタ順の迷いが消えた」と話す西村
きょん 本当はぜんぜんクズじゃないんです。
西村 その山添さんに相談したら「1本だけで終わった場合、浮気の方がコットンのプラスになる」と言われて。浮気のネタって、きょんは役が憑依したかのようにキャラクター全開で、僕はそれを受ける側に徹してるんですよ。その役割分担がはっきりしているぶん「両方のすごさが伝わる。受けの演技力は素人には伝わりづらいけど、玄人にはわかるから」って言ってくれて。
――出番順でコットンの後にネタを披露する予定だったビスケットブラザーズが、やはり女装していて男性がカツラを外すシーンのあるコントを持っていました。なので、かぶらないよう、2人に1本目にどちらのネタをやるか教えて欲しいと聞いたそうですね。でも、ビスケットブラザーズいわく、いつまで経っても連絡がなく、催促したらようやく教えてくれたと。「はめられかけた」と憤慨していました。
きょん 原田(泰雅)さんの方でしょ? 根に持つタイプですよねー。きんちゃんの方は仏様みたいな人なんで。
西村 迷い過ぎて、心に余裕がなかったんです。そんなことするわけないでしょ! 忘れてただけですから!

取材・文/中村計 撮影/下城英悟
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