#2「病気で引退を覚悟したときに吉川晃司に救われた一言「お前はさびない女だから大丈夫だよ」―大黒摩季の歌が色あせない理由」はこちらから

歌うことがずっと義務だった。
今、生まれて初めて歌が楽しい

――今回のアルバムは、新曲を収めたニューソング盤あり、リマスタリングのベスト盤あり、さらにヒット曲のリミックス盤ありの3枚組という力作ですが、完成した今の率直な思いはいかがですか?

全部出し切っちゃって、ミイラみたいになってます。こんなに自分を使い果たしたことないかもしれない(笑)。今回のアルバムはセルフプロデュースで、作る前から最後のマスタリングまで、みんなが嫌がるぐらいこだわって作ったので。

古巣のビーイングに戻ったら、90年代を共にした野武士のような精鋭のクリエイティブスタッフたちがまだ残っていて、彼らにはそんな私に逃げずについてきてくれる持久力がありますからね。そういう意味でも、音の切れ際まで全部、神経使って作り上げました。私、このアルバムを最後に、歌い手としては隠居するつもりだったんですよ。

大黒摩季は6人いた!? 1年364日スタジオに入り続けた大黒摩季が走り続けた不屈の30年_1
すべての画像を見る

――そうなんですか! それはいつ頃から思い始めていたんですか?

2022年6月1日の30周年ツアー初日に初めて、自分の限界が見えちゃって、すごいショックだったんです。ホームの北海道で迎えた、人生で1番いいツアー初日だったんですよ。病気から復帰して、体の中で滞っていたものがどんどんつながって、今、最高レンジの成長期ぶっちぎりのところにいるんですけど、天井はきっとここなんだっていうのが見えちゃって。

今まで、常に前に進むことが自分の生き様だったから。その1週間前に、去年亡くなった母の納骨をしたり、『Sing』を母校で録ったりして、人生を振り返っちゃったからっていうのもあって、いいライブだったのに、次の日すごい落ち込んだんです。