(前編)

職業訓練校に入るが、席にずっと座っていられない

川原愛美さん(仮名=40)は30歳を過ぎて、保育士の資格を取るため職業訓練校に入った。幼いころ長く入院した経験があり、「いつか小児科で病棟保育をやりたい」という夢が、心の中にはずっとあったのだという。

「病院育ちだからでしょうね。その世界しか知らないから、そういう夢を持つ子は多いんですよ。病棟保育の求人はほとんどないのは知ってたけど、保育士の資格を取っておけば、いつかチャンスはあるかもと。医師にあこがれる子も多いけど、大体、途中で無理だとあきらめて、看護師になりがちなんです」

職を転々としてギリギリの生活を続けてきた川原さんにとって、職業訓練校は2年間の学費が無料なのも魅力的だった。

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だが、入学してみると、すぐに壁にぶつかる。

「とにかくダメダメだったんですよ。保育って、結構詰め込みなんです。朝9時から夕方5時まで席にずっと座っていられないことに、その時、初めて気が付きました。ほぼほぼ初めての学校ですしね。

授業中、もぞもぞしたし、課題をこなせないし、メモもうまく取れない。だから実習記録を書いても、全然足りない。子どもたちの様子をもっと細かく書けと言われるんです。私はリズムにも障害があるらしくて、音楽の授業でリズムだけ外れるんです。でも、音程は正常だから、先生も“?”になっちゃって」

もし、子どものときに発達障害だとわかって早い時期から療育などを受けていれば、もう少しうまく対処できたかもしれない。だが、川原さんは小中高校とひきこもっていたため、自分が発達障害だとは思いもしなかったそうだ。大人になって障害者手帳(精神障害者保健福祉手帳2級)を取ったが、職業訓練校では一切配慮されなかったという。

最後の実習で不合格になり、川原さんは結局、そのまま学校をやめた。

「まあ、1年半も無駄にしたけど、お金は無駄にならなかっただけマシだから、しょうがないよね。うん。あきらめるしか」