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グーグルが製薬会社になる?

この先の未来、優秀なAIを持つ製薬会社がマーケットで勝つ、との構図が生まれるでしょう。
 
しかし、大規模な製薬会社には、そもそもソフトウェア企業に強い企業が多くありません。その結果、ここでもグーグルやマイクロソフトといったビッグ・テックが製薬会社と協力したり、場合によっては知見のあるスタートアップを買収するなどして、医療分野に積極的に進出していきます。
 
グーグルは5年ほど前から創薬も含め、医療分野でAIを活用していくことを公言しており、後述する画像診断や医療事務など、主に4つの分野で進めています。医療機関や製薬会社との連携も同様です。

AI活用でIPS細胞の培養期間が3分の1に短縮される…グーグルが製薬会社に「創薬に強いAI開発」を_1
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ディープマインドとの提携もそのひとつです。同社はもともと、AIを使った創薬など医療分野に取り組んでおり、急性腎障害をAIが画像で判断するなどの成果を、かなり早い段階から発表していました。
 
年次イベントGoogle I/O 2023でも発表されていましたが、Google Cloud Platform上における、機械学習プラットフォーム「Vertex AI」を活用し、製薬会社と協力して創薬に注力しています。

Vertex AIは、グーグルが独自開発した汎用的なAIモデルであり、エヌビディア製のチップを使っています。創薬に特化したAIではありません。
 
しかし、これまで紹介してきたように、創薬に関するデータを学習させ、創薬に強いAIモデルを構築することができれば、グーグル自身が製薬会社、もしくは創薬部門と連携して、より注力することができます。
 
その結果、グーグルは製薬会社のような存在となり、画期的な新しい薬を世に送り出す。そのような未来は十分考えられます。

マイクロソフトもグーグルと同じく、アメリカの「Nuance Communications(ニュアンス・コミュニケーションズ)」という企業を買収するなどして、ヘルスケア領域への進出を強めています。

同社は、音声認識とAIに強いベンチャーで、医療分野では医師と患者のやり取りをAIがテキストにして、電子カルテとして保存できるようなサービスを手がけています。
 
買収は今から2年ほど前のことですが、金額は197億ドル。当時のレートで、約2兆1500億円の規模ですから、マイクロソフトがいかに医療分野に注力しているかが窺えます。
 
日本国内では、製薬大手の中外製薬がAI、ディープラーニングを活用した創薬に取り組んでいることを公表しています。