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「お金頂戴言うの恥ずかしいよ。でも本当にお金がない。だから悔しいけどそうするしかない」

フィリピンの高級住宅街にある2階建てのミカの実家は、エアコン、ソファ、テレビ、オーディオなどが揃い、メイドもいて、大きなSUV車まである。これらは全てミカとミカの姉が日本で稼いだ金で買ったものだ。

日本から見ても羨むような生活をしているフィリピンの家族だが、親戚たちの多くは貧しい生活をしている。

仕事がなく平日昼間から寝転んでいる叔父さんもいる。日本で毎日忙しく仕事をしている身からすれば羨ましいかもしれないが、金も仕事もなく、毎日やる事がないというのは辛そうだ。行きたい所にも行けず、食べたいものも食べられない。金を持っているミカの家族のような親戚の家に居候をするしかないが、居候先の家族たちの視線も決してあたたかいものではないから、気を遣いながら、家の掃除をしたり、買い出しに行ったり、残りものを食べたりするのだ。

フィリピンに帰省するときに出会うそうした居候の親戚も、家に訪ねてきて「お金頂戴」と言う親戚も、表情の奥にはどこか後ろめたい気持ちがあるようだった。

「お金頂戴言うの恥ずかしいよ。本当は言いたくない。でも本当にお金がない。だから悔しいけどそうするしかない」

ミカも昔は親戚の家に居候生活をしていたから、親戚たちの気持ちがわかると言う。

写真はイメージです
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どうしよう。おじさんが倒れたって

そして、貧しさは命に関わる。

「どうしよう。叔父さん(子どもと再会した叔父とは別の叔父)が倒れたって。今、病院にいるみたい。従妹から連絡があった」

ある日、家に帰ったら目をパンパンに腫らしたミカが、泣きながらスマホの写真を見せてくれた。つい数カ月前、ミカとフィリピンに帰省した時に会った叔父さんが、酸素ボンベをつけて病院のベッドに寝ている。

「昨日の夜、すごい頭が痛いって言って、病院に行って先生待ってる間に倒れた」
ミカが僕に説明している間に、叔父さんの子供からミカにビデオ通話がかかってきた。

「叔父さんの容態はどう? 危ないのね。日本からもお祈りしてる。お姉さんと話してお金送るからね」
叔父さんの奥さんは子供の隣で心配そうに座っている。姉と話し合い、いくらか我が家からも金を出すことにした。