「トー横をいつかは卒業」と話すC子ちゃん
C子ちゃんは、13歳の頃からライブ配信をして投げ銭を得たり、ファンと話をして、月に20万円以上稼ぐこともあったという。トー横に通うようになってからは案件(お金をもらって男性とデートをしたり、時に体の関係を持つこと。ただし彼女は性行為を伴う“案件”は行っていない)もおこなうようになり、「お金には困らない」とC子ちゃんは話す。
女の子は稼ぐ方法があるのに対し、男の子は稼ぐ手段がさほどない。そのため、自分のことを好いてくれる女の子に貢がせるケースがトー横界隈では少なからずあるという。C子ちゃんの元カレもまた、お金欲しさに別れた後でもつきまとってくるのだという。
「もともと最低限の勉強は何とかできたから、最近、ファッションとデザイン専門の高校に受かりました。来年から高校に行って違う生活も始まるけど、ここでできた友達もいるし、それなりには来たいです。ただ“トー横”は好きだけど、いつか卒業しないといけないなって気持ちもあります。ここで色んな人を見てきたから、それを活かして、皆が驚くデザインをしたいと思っています」(C子ちゃん)
医療スタッフの指示で傷を洗い、ワセリンを塗った後、大きめの絆創膏を渡されてC子ちゃんは医療会場を後にした。
一方、「1週間学校へ通った自分へのご褒美」として、トー横に顔をだす少年もいた。16歳のDくんは川崎市在住、父親は一般企業につとめ、母はパートで働いている。
「7月からたまに来るようになりました。ネットで知り合った元カノから会おうよと誘われた場所がトー横だったんですよね。ここだと何をしてもいいし、友達もできるから楽しいんですよ。
学校ですか? 起立性の障害持ってるから、朝起きられないんですよ。起きられたら行ってますけど、友達もいないから……。友達できないの、キツいっすね。中学に上がって新しい環境になって、みんな構ってくれなくなっちゃいました。小学校はちゃんと行ってたし、優等生だったんですけどね。その頃は親も優しかったですよ。でも今は、会話も全然ない」
Dくんの隣には20代半ばと見られる年上の男性がいて、仲よさそうに肩を組んでいた。以前から知り合いなのかと聞くと、今日知り合ったばかりだという。年上の男性はDくんにタバコを進め、Dくんは嬉しそうにそれを受け取っていた。
そして、やはりもらいものだという缶チューハイにストローをさしてそれを飲んだ。顔はまっ赤に火照っている。周りに誰もいなくなると、「気持ち悪い」と呟いた。
人と繋がれる嬉しさで、年長者からの悪い誘いを断れない……。ここにひとつの大きな問題があった。