犯人グループは6名とされ、関口寿喜(27)、亀谷蒼(25)、当時18歳の少年AとBの4人が傷害致死の容疑で逮捕された。残りの少年CとDは暴行に加わらなかったとして、逮捕は免れている。
主犯格である関口寿喜被告の公判は、2022年9月20、21、26、27、28日に行われ、被告人証人は、トー横キッズのCとDの他、被告人母・父・氏家彰さんの兄の計 5 人 が立ち、証言をした。亀谷被告と氏家彰さんとの間に金銭トラブルがあったことがリンチ事件の発端とされている。
関口被告は、トー横キッズやホームレスに炊き出しをする「歌舞伎町卍会」のメンバーで(事件当時はすでに脱会)、路上に集まる子どもたちの役に立ちたいと願う氏家さんとは「友達だった」「氏家さんを助けにいくために現場に向かった」と主張する。だが、関口被告は土下座をして謝罪をし続ける無抵抗の氏家さんに、殴る、蹴るといった暴力を7時間にわたって振るっている。
暴行の理由について、(別の不良グループとのトラブルに巻き込まれていた氏家さんを)「最初は助けるつもりだったが、だんだんイライラして暴行に加わってしまった」と公判で主張した。10月7日、東京地裁は「悪質で残酷な犯行だ」とし、懲役10年の実刑判決を言い渡した。
キッズたちと同じ年頃の子どもを持つシングルマザーで、子どものための支援団体NPO法人CPAOの代表の徳丸ゆき子さんは、貧困、虐待といった社会の“しんどい状況”に置かれている子どもたちをサポートするため、長年炊き出しなどの活動をしてきた。
氏家さんとは活動を共にする“同志”だった徳丸さんは、今回の事件の裁判を全て傍聴した。
集英社オンラインはこのトー横傷害致死事件について、徳丸さんに話を聞いた。
「事件が起きる前夜、私は大阪から東京に向かっていました。夜22時くらいに新宿に着き、『明日は炊き出しの日だよ』と彰さんに伝えるために、歌舞伎町のシネシティ広場と大久保公園にいきました。彰さんは私たちの団体の炊き出しを手伝ってくれるメンバーだったのですが、炊き出しの日がいつなのかを忘れてしまうので、定住地にしているそのどちらかに誘いに行くことになっていたのです。ところがその日はどちらにもいませんでした。珍しいこともあるなと思いながら、その日はホテルに帰りました」
翌日も氏家さんは姿を現さなかった。妙な胸騒ぎがした徳丸さんは炊き出し中も、氏家さんのことを気にかけていたという。
「子どもたちは『知らない~』と言いつつも、『なんで彰さん、探してるの?』と訝しげに聞いてくる子もいました。ふと見ると、三角座りをしている子が独り言のように『死んだ。アキラ、死んだ』と言っていたのです。『え? 彰さん、死んじゃったの?』と尋ねたところ、隣にいた子が慌てた感じで『この子、パキってる(クスリでキマっている)から。ウソ、ウソ』と言い、『何か変だなあ』と感じながらも、再び炊き出しをしていたビルの前へと戻りました」
戻ってしばらくすると、区役所通りを何台ものパトカー、救急車が慌ただしく走り抜けていった。徳丸さんと炊き出しのメンバーは、そのけたたましいサイレンを聞きながら、「一体何があったんだろう?」「事件かな? 怖いね」などと話していたという。