松本被告の身勝手な殺害動機とは…
「日常」を取り戻した松本被告はその後も好きなD V Dを購入するなどしていつもの生活を続け、母親の通院先や介護センター職員、親戚などに両親の様子を聞かれるたびに嘘をついていたが、これ以上ごまかしきれないと自宅から逃亡した。
親戚からの連絡を受けた福岡県警が6月29日、目張りされた冷蔵ショーケースに入っていた両親の遺体を発見。7月4日に逃走先の京都市内で松本被告を確保、逮捕していた。
父親のことは嫌っていた松本被告だが、母親との折り合いは悪くはなく、35年間に及ぶ引きこもり生活で唯一口をきく相手であり、買い物や病院の送り迎えに付き添っていたという。生活費は両親の年金や貯金から月に1〜3万円を小遣いでもらい、両親の食事の準備や風呂掃除などの家事もそれなりにしており、それ以外は漫画を読んだりD V D鑑賞に一日の大半を費やしていたが、この時間を邪魔されることが最も我慢できないことだったらしい。
息子に惨殺された老夫婦は、現役時代は社交的で地域でも知られた存在で、酒店の一角では簡単な料理を出す「角打ち」としても繁盛していたという。
近くに住む70代の男性はこう語る。
「博和さんは地域の消防団にも入っていたし、奥さんは美人で商売上手で、近くの工場の従業員や土木作業員が角打ちに列をなして賑わってましたよ。時代の流れでこういう商売も年々廃れて、酒屋さんも10年くらい前にとうとう店を閉めちゃったけど、冠婚葬祭や地域の行事にはご夫婦でちゃんと出席されてました」
子供たちはどうだったのだろう。男性が続ける。
「逮捕された淳二さんは頭がよくて進学校に通っていると評判だったけど、大学を中退して、対人恐怖症になったみたいな噂がずっと出ていました。酒屋の配達しているところを一度だけ見かけたけど、ちゃんと手伝ってる様子じゃなかったな。お兄さんもずっと病院に入っているしね。もう最後にあの家族を見かけたのもいつだったかな……」
近隣に住む60代の女性はこう振り返る。
「私は30年くらい前にこちらへ越してきて、世代が違うからそんなに深い話はした事ないんですけど、奥さんはいつもニコニコしてて穏やかな方でした。古くからある酒屋さんらしくて地元な方々からとても愛されていて、駄菓子やアイスも売っていたから子供達にも人気がありました。今では子供の姿すらほとんど見かけない寂しい田舎町になってしまいましたけどね」
昭和の子供がアニメに興じて引きこもっているうちに、時代は流れ、街並みすら変わってしまった。松本被告は何をぶっ壊し、何を守りたかったのだろう。昭和は遠くなりにけり。
取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班