壁を乗り越えて実感した“今”の大切さ

「俺にはもう失うものはない」と吹っ切れてブンデスリーガに挑み、ビーレフェルトを残留へと導く大活躍を演じた堂安。昨季はオランダ・エールディビジへと復帰し、PSVでシーズン2桁得点を記録。充実のシーズンを終え、W杯を3か月後に控えた今季開幕前にはフライブルクへと完全移籍を果たした。

心技体が充実し、結果もついてきたこの時期に、堂安は「“今”に集中することの大切さ」を実感していた。

「以前は先のことばかり、未来のことばかり考えていて、今が疎かになっていたんですよね。夢は持たなきゃいけないけど、夢を見すぎちゃダメ。夢しか見てないやつは足元をすくわれます。俺が経験しましたから。もちろん、大きな目標を掲げることはすごく大事だし、例えば、年に2回くらい目標を紙に書いて頭にたたき込んだら、そこからはその目標を忘れてがむしゃらに毎日過ごさないと。それが一番の近道なんですよ。

そうやって思えるようになったのは最近です。ビーレフェルトにいたときも、昨季PSVに戻ってからも、目の前のことに必死で集中していたので、そういうことを考えるタイミングもなかったので。いろいろメンタルについて勉強してきたけど、そういうことじゃなかったですね……。

勉強することも大事ですけど、実際に経験して心の底から納得しないと自分はなかなか変わらない、ということをこの数年で身を持って実感しました。今まで俺は経験の大切さって、そんなに信じてこなかったんです。『経験なんてしなくても、経験せずに結果を出せばいい』と思っていたけど、『ああ、こういうことだったのか!』と今は思います。サッカー選手としてだけじゃなく、ひとりの人間として大事なことを学べた気がします」