日本の性交同意年齢、改正後の課題は
今回の法改正に向けた試案では、以下の3点がポイントになっている。
1.性交同意年齢を13歳から16歳に引き上げ
2.強制性交罪をはじめとする性犯罪に関する時効を現行の10年から15年へと5年延長
3.性的な行為を目的に子どもを手なずけるグルーミングに対する処罰の新設
これによって、日本の性犯罪・性暴力に対する改革が一歩進んだという見方もできる。
一方で、いまだ課題も残る。
条件の複雑さ
まず、条件の複雑さだ。「性交同意年齢」が16歳と定められれば、15歳同士などの性行為も罪に問われることになってしまう。
そこで、この法案では「年齢差がプラス5歳以上の者」にのみ適用するとしている。同世代の交際や性行為を制限しないための措置だ。また、法制審議会で示されたたたき台では、「13歳以上16歳未満の者に対し、性交等をした場合のうち、一定の場合については、処罰から除外する」という案も示されている。
全ての場合において罰せられるのではなく、“一定の場合”に該当し、処罰対象から外れるケースもあるということだ。加えて、対処能力(性的な行為に関して自立的に判断して対処することができる能力)の有無などに言及する文言もあり、場合分けが複雑化していてわかりづらい。
ただ、現段階ではまだ試案であるため、どのように審議・決定されていくか、今後の動向に注目したい。
義務教育における性教育不足
次に、「性行為について扱わないこととする」という日本の義務教育における性教育不足が挙げられる。
学習指導要領には、
・小学5年生の理科:「人の受精に至る過程は取り扱わないものとする」
・中学1年生の保健体育科:「妊娠の経過は取り扱わないものとする」
と明記されている。いわゆるはどめ規定だ。このはどめ規定により、義務教育で性行為について学ぶ機会は非常に少ない。
「性」に対する考え方の基盤となる正しい知識を持ち合わせないまま、「性交同意年齢」を迎えることは、現行の13歳でも、16歳でも変わらない。若年層の性被害の多さを鑑みると、日本の性教育の内容やその希薄さは問題視されるべき事案である。
性に対する認識の低さ
また、日本では「性」に対する認識が非常に低いことも課題だろう。
性犯罪や性暴力のニュースや時事問題が世間で話題となっても、そのことについて家族や友人とオープンに意見を交換するという人は少ない。「性交同意年齢」という言葉自体耳にしたことがないという人も多いのではないだろうか。
「性交同意年齢」の引き上げやそれにまつわる議論、ニュース等をきっかけに「性」への関心を高め、知識だけではなく意識もアップデートしていく必要があると言えるだろう。