ノルウェー軍は国境付近で軍事演習をしなかった

でも果たして、それでいいのでしょうか。違った考え方があるはずです。確かに辺境の人たちの中では、民族自決とか、固有の権利を守るために独立みたいな運動は起こるでしょう。それは本土の側がいじめるからです。違いますか。

それは独立されたら困るけれども、高度な自治を認めてあげればいいじゃないですか。ノルウェーの先住民族であるサーミのようにです。

逆に味方につけることが安全保障じゃないんですか。そういう考え方もあるはずでしょう。何で我々はそっちを取れないんですか。ばかの一つ覚えみたいに唱えられるのは軍備増強ばかりです。違った考えを提唱しましょうよ。

実は、それを実践している国があります。それがノルウェーです。アイスランドです。両国ともNATOの創立以来のメンバーです、アメリカの最重要同盟国です。特にノルウェーに関しては、冷戦時代からソ連と接していたNATO加盟国です。

そのノルウェーは、少なくとも2014年までは、ソ連、ロシアと国境を接するところにはアメリカ軍を置きませんでした。許しませんでした。

ノルウェー軍は非常に強い軍です。アフガンでいい働きをしました。そのノルウェー軍でさえ国境付近では軍事演習をしなかったのです。その辺りで暮らしているサーミは、日本のアイヌに比べたら、本当に自治政府みたいな感じの自立を認められています。

北極の国連といわれる北極評議会、アークティックカウンシルというのがあります。そこにロシアとカナダ、アメリカといった超大国と同列のレベルでサーミは代表権を持っているんです。このぐらい手厚く扱われているわけです。

クリミア侵攻が起きた2014年から、ノルウェーも世論が割れています。対応が変化しつつあります。これは分かりますよ。日本だって沖縄をどうするかということで、世論がこれだけ割れるわけだから。

でも、この日本は、ノルウェーが果たしてきたような役割を担えないんですか。沖縄、北海道を完全非武装化することによって。別に日米同盟を廃棄しろとまでは言いませんけれど。

第3回 安全保障を口実にした辺境の人々の権利抑制は許されない_2
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