キッシンジャー、冷戦直後の予見

ウクライナ戦争が始まった当初、実はキッシンジャーが来年百歳になるので、それに合わせて論文を書こうと思って、キッシンジャーの本をいろいろ読んでいました。

冷戦が終わった後に彼は『外交』という本を書いたのですが、その中にロシアについて書いた節があって、それを読んでみて、ああそうなのかなと思った一節があります。それをまとめとして御紹介したいと思います。

「共産主義崩壊後のロシアは、過去の歴史の先例を全く反映していない国境の中に自らを見いだしている。ヨーロッパと同じように、ロシアは多大のエネルギーを自らのアイデンティティー再確立のために使わねばならないであろう。

ロシアはその歴史に立ち戻り、失われた帝国復活を求めるのであろうか。ロシアは重心を東に移し、アジア外交により積極的に参加するのであろうか。ロシアはどんな原則と手段によって、その国境周辺の動乱、特に不安定な中東の動乱に反応するのであろうか。

ロシアは世界秩序にとって常に不可欠な要素であるが、他方、右の疑問に答えようとすることによって、必然的に起きる動乱の中では、世界秩序にとって潜在的な脅威となるであろう」
キッシンジャー著『外交』(岡崎久彦監訳、上下巻、日本経済新聞社、一九九六年)より

潜在的な脅威どころか、まさしく顕在的な脅威となってしまいました。

撮影:等々力菜里

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