この戦争はこれまでの世界を根底から覆そうとしている
現状の報告はこれまでにして、私自身がこのウクライナ戦争とは何かということを考えたときに、結局これは構造戦争だということでした。つまり秩序を形成する戦争であるということだと思います。
地震にたとえて言えば、普通の地域紛争というのは、まさしく阪神・淡路の大震災のようなもの──あれは活断層型の地震だったんですが──、影響はその地域にしか及ばないんですよ。
ところが、今回のウクライナ戦争というのは、東日本大震災のようなプレート型のある種の大地震です。根底から崩れ始めています。これはもう世界の構造が変わりつつあるということです。今起きているのは、事実上の第三次世界大戦であると思います。
これでウクライナが負けようが、ロシアが負けようが、どうなろうとも、今回の戦争の後で世界の秩序が大きく変わることはまず間違いありません。今それでなくても、その影響が直接、間接、世界中に波及しているわけです。
エネルギーを通じてであれ、あるいは思想的な対立であれ、国内の政治、アメリカも日本もそうです、ヨーロッパもそうです、世界中の国内政治に大きな影響を与えています。戦争の結果がどうであれ、恐らくこの影響は、秩序が安定するまではかなり長きにわたって続くだろうと思います。
そういう意味で、現在の戦争というのは、これまで我々が冷戦時代にいろいろと経験してきたような、そういう戦争ではない。地域紛争でも何でもなくて、ある種の代理戦争でもありません。完全に秩序が変化していっているという、そういう戦争だというふうに見るべきだと思います。
何でこんな戦争が起きたのかという話ですけれども、実は国際政治学を学んできている、研究している世界中の学者も明確な答えを出せていません。あのキッシンジャーさえもいろいろと批判される。
国際政治学で非常に有名だったジョン・ミアシャイマーというアメリカの研究者もいますけども、今もうこてんぱんに叩かれています。
彼らの言ったことが正しいかどうかは別にしても、その言説そのものの正当性というのか、イデオロギー的な正当性というものが許されるのかといった、まさしくそうしたイデオロギー的な問題も含めて、この戦争が大きな影響を、少なくとも政治だけではなくて、我々の学問、あるいは経済においても、あらゆる面でこの戦争はこれまでの世界を根底から覆そうとしているという、そういう事態だろうと思います。