“野戦病院”と化したフランス代表

――フランス代表の現在のチーム状況を解説していただけますか?

日本代表と同様に、前線・中盤・最終ラインのすべてのブロックに怪我人がいる状態で、日に日に状況が変わっています。

最終ラインは、絶対的な中心選手であるCBのラファエル・ヴァラン(マンチェスター・ユナイテッド)が、グループリーグ初戦に間に合いませんでした。ディディエ・デシャン監督はこれまでの基本フォーメーションの「3-4-1-2の3バックシステム」を完全に捨てて、4バックで今大会に臨むでしょう。

4バックシステムのCBの2人には、オートマティズム、阿吽の呼吸がより求められます。ヴァラン抜きのコンビが意外と上手くいった場合、そのコンビを崩して復帰後のヴァランを組み込むのか、上手くいったコンビを採用し続けるのか、現段階ではかなり不透明です。

――中盤はどうでしょうか?

前回のロシアW杯優勝チームの大黒柱だった、ポール・ポグバ(ユべントス)とエンゴロ・カンテ(チェルシー)が怪我の影響で今大会未召集です。招集選手の中では、チュアメニ(レアル・マドリード)がW杯予選でもまずまずの活躍を見せました。それから、所属クラブでの活躍度合いから考えると、フランス国内でも賛否両論ありますがアドリアン・ラビオ(ユベントス)、以上の2人が中盤のメインになりそうです。

――前線はどうですか?

今年のバロンドールを受賞したカリム・ベンゼマ(レアル・マドリード)が怪我で辞退となりましたが、このシチュエーションは「2002年日韓W杯のジネディーヌ・ジダン」に似ていると感じています。

ジダンが中心だった時代のフランス代表は、1998年フランスW杯で優勝、2000年の欧州選手権(以下、EURO)でも優勝し、ジダン自身はバロンドールを受賞しました。そんな素晴らしい流れで日韓W杯を迎えたのですが、大会前に怪我を負い、グループリーグ3戦目にようやく強行出場するものの、“時すでに遅し”で…。
結局、2敗1分という残念な結果で敗退しました。

おそらくベンゼマの代わりはオリヴィエ・ジルー(ACミラン)が出場するでしょう。ジルーはキリアン・エムバペ(パリ・サンジェルマン)との連携が良く、表立って口にはしていませんが、エムバペとしては「ベンゼマよりもジルーの方がプレーしやすい」と感じている節があります。
その点ではプラスな要素もあるかもしれませんが、いずれにしろ全てのポジションで怪我人が多く、かなり大変なチーム状況です。