コアユーザーへ還元するために

たしかに、先述の「アロー 22 バックパック」の大ヒットがあり、日本では早い時期から大手セレクトショップを中心に、いわゆる“別注アイテム”の製作というアークテリクスとのコラボ業態が盛んに行われる動きがあった。しかし、近年のアークテリクスは、パレススケートボード(Palace Skateboards)やジルサンダー(Jil Sander)といった欧米の名のあるファッションブランドとの協業も盛んに行っている。そのことに関して、さらに突っ込んで尋ねた。

国内新店舗を次々にオープン。30年間ずっと革新的であり続けるアウトドアブランド「アークテリクス」の現在地_12

「私たちは常に、ハイカーを中心としたアウトドアズマンを念頭にモノづくりしています。しかし一方で、着るシーンを限定したり強制したりしているワケではなく、ユーザーが自由にどんな風に着てもらってもいいと思っています。

そういう点からも日本のユーザーたちの着用方法は、ブランド黎明期から非常に参考になっていました。それがビームスをはじめとした日本のショップとのコラボレーションに繋がり、コラボによって我々自身も新たな視点を発見することができ、そして同時にその発見をユーザーに還元するというサイクルを作ることができた。そのような経験があるから、クラフトマンシップを持つブランドとの協業は大歓迎なんです。

ありがたいことに、そういった誘いを多くいただいているのも事実で、アークテリクスというブランドをより洗練させるチャンスだと思っています。必ず自分たちの身となり、そしてハイカーなどのコアユーザーのために活かせると信じていますから」(カール・アーカー氏)

国内新店舗を次々にオープン。30年間ずっと革新的であり続けるアウトドアブランド「アークテリクス」の現在地_13

洋服屋やファッションブランドとの取り組みは必ず自分達に還元できる–––––。そう言い切ったカールの言葉は素材、技術、デザインの三位一体を提唱するアークテリクスのブランド理念に叶ったものである。

アウトドア業界において不動の地位を築いたアークテリクス。しかし彼らはいまの立場にあぐらをかくことなく、貪欲に学び続け、そして常にユーザーに還元しようとしている。
その姿勢があるからこそ、アウトドアズマンからの求心力を損なうことはなく、常に注目の的であり続けるのだろう。


文/岡本546
写真/山田秀隆