大杉漣のかっこよさにしびれる
『ポストマン・ブルース』(1997)上映時間:1時間50分/日本
監督:サブ
出演:堤真一、遠山景織子、大杉漣、滝沢涼子
郵便局員が殺し屋と勘違いされて追われるという、突拍子もない話なんですが、めちゃくちゃおもしろい作品です。大杉漣さん演じる殺し屋のジョーが、バーでカクテルを飲みながら滝沢涼子さん演じる女性に殺し屋の美学を語るシーンが出てくるんですが、なんか笑っちゃうんですよ。ハードボイルドをステレオタイプに描いていて、すごくかっこいいのにユーモアがある。大杉漣さんだから出せたおもしろさなのかもしれないですね。ちなみに僕は『トンマッコルへようこそ』(05)という韓国映画も大好きなんですが、ラストで常識では説明しきれない現象が起こるんです。『ポストマン・ブルース』もあの映画に近いラストで、泣いちゃうんですよねえ。飲まずにはいられない映画です。
つらすぎて飲まずにいられない……
『キッズ・リターン』(1996)上映時間:1時間48分/日本
監督:北野武
出演:金子賢、安藤政信、森本レオ、石橋凌、モロ師岡
北野武監督による青春映画の名作ですが、印象的なのは安藤政信さん演じる期待の新人ボクサーを、モロ師岡さん演じる先輩ベテランボクサーが酒場に誘って堕落させていくシーン。これはつらくて飲まずにいられなくなりましたね。酒でダメになるか楽しくなるか、その境界線は誰にでもあるし、飲む相手を考えないといけないという教訓も学びました。弱いふたりの気持ちがわかるからこそ、痛々しくもしみじみとする、たまらん映画です。ちなみにそのシーンで登場する酒場はいつも煙がもくもくで、その雰囲気も最高でした。
飲み会の理想といえばこれ
『朝霧』(1968)上映時間:1時間36分/日本
監督:吉田憲二
出演:和泉雅子、杉良太郎、八千草薫
映画の割と最初の方で、杉良太郎さん演じる医師が和泉雅子さんたち演じる看護師3人を連れて爽やかに飲むシーンが登場します。モノクロなのでおつまみがよく見えないのが残念ですが、提灯が店の中にぶら下がっている酒場の雰囲気が最高です。これがしかもコの字酒場。カウンターで若い女性たちが年上の医師に物おじせず、ざっくばらんに飲んでいる感じがいいんですよね。女の人と男の人が対等に楽しんでいる、あれが飲み会の理想って感じがしました。しかも「この後もう一軒行こう」みたいな感じにならないのもいいんです。
酒はあがく人たちの潤滑油
『洲崎パラダイス赤信号』(1956)上映時間:1時間21分/日本
監督:川島雄三
出演:三橋達也、新珠三千代
かつて赤線地帯である洲崎で働いていた新珠三千代演じる蔦枝が、人生を変えようと、三橋達也演じる義治と共に再び洲崎に戻ってくる物語。蔦枝は赤線の手前の橋で思いとどまって、橋のたもとにある居酒屋「千草」で働き始めるんですが、登場するのが不幸な人や、危なっかしい人だらけ。そこでみんな豆腐なんかをつまみに瓶ビールを飲んでいる。なんとか人生をやり直したい、リセットしたいとあがくシーンの潤滑油として酒と酒場が存在している気がしました。