仕事の分権化が進んでも「会社」がなくならない理由

さまざまな仕事が分権化され、プロジェクトとして切り分けられるようになると、会社はなくなってしまうのだろうか。そんな予言をするひともいるが、おそらく会社は(当分の間)存続しつづけるだろう。

その理由は、もっとも早く(1950年代から)プロジェクト型に移行した映画産業でも、いまだに映画会社が大きな影響力をもっているからだ。

大作映画をつくるには数十億円、ハリウッドなら数百億円の制作費をかけることもある。こんな莫大な資金を個人(プロデューサー)が管理することはできないから、投資家が安心してお金を預けられる映画会社が必要だ。

いったん映画が出来上がると、今度はそれを全国の劇場で上映したり、DVD販売やネット配信したり、海外に版権を売ったりしなければならない。作品を市場に流通させるには膨大な事務作業(バックオフィス)が必要で、これも映画会社がやっている。

仕事のなかには、プロジェクト化しやすいものと、そうでないものがある。ギグ・エコノミーにもっとも適しているのはコンテンツ(作品)の制作で、エンジニア(プログラマー)やデータ・サイエンティストなどの仕事や、新規部門の立ち上げなど、尖った才能と経験が必要な仕事へと拡張されていった。

それに対して、利害の異なるさまざまな関係者の複雑な契約をまとめたり、スタッフの管理や顧客サポートなどを必要とする仕事はこれまでどおり会社に任されることになるだろう。フリーエージェントがギグで制作したコンテンツ(音楽や映画)も、多くの場合、会社のブランドで流通している。