会社をプロスポーツチームとして考える

ネットフリックスがこうした大胆な人事戦略を採るのは、ビジネス環境がものすごい勢いで変わっているからだ。映画などのDVDの宅配からスタートしたネットフリックスは、オンラインでの映像配信へと事業を大きく変え、オリジナル作品を積極的につくるようになった。わずか数年でこれほどの変革を達成するためには、従来のやり方にこだわっていたり、新しい技術や知識に適応できない社員には、どれほど功績があっても辞めてもらわなければならなかったのだ。

ほとんどの日本人は、これを「冷たい」と思うだろう。それは無意識のうちに、会社を共同体(家族)のようなものだと思っているからだ(だから「家族的経営」を自慢する経営者がたくさんいる)。だがネットフリックスは、会社をスポーツのチームのように考えている。

たとえば、FIFAクラブワールドカップでトップに立つサッカーチームをつくろうと思ったら、ゴールキーパーからフォワードまで、世界中のサッカー選手のなかから最高のプレイヤーを集めなくてはならない。フィールドに出るのは11人で、リザーブまで入れてもせいぜい20人だから、監督の構想から外れた選手は他のチームに移ってもらうしかない。

こうして考えると、ネットフリックスの人事方針はぜんぜん驚くようなことではなく、サッカーでも野球でもバスケットボールでも、プロのスポーツチームがごくふつうにやっていることだ。

それに対して日本の会社は、ビジネス環境がどれほど変化しても、たまたま新卒で採用した社員だけでなんとかやりくりしようとする。これは、「陸上部のあいつ、ちょっと足が速いからフォワードにどう?」とか、「ゴールキーパー、身体がデカいからあいつにやらせればいいんじゃないの」とかいっているのと同じだ。

ところが日本には、そんな素人チームが、メッシやネイマールがいるパリ・サンジェルマンと互角の勝負ができると思っているひとがまだたくさんいる。これは「妄想」だと思うが、その結果は数年後には誰の目にも明らかになるだろう。