中嶋マジックと矢野采配
――一方、オリックスの中嶋聡監督は、143試合で141通りの先発オーダーを組むなど、選手の特性をうまく引き出すことによって、パリーグ連覇、さらには日本一を成し遂げました。
これはどのチームにも言えることですが、今シーズンの選手起用は、好不調だけでなく新型コロナウイルス感染拡大の影響を考えなければいけない状況でした。
その中でも、中嶋監督は、「中嶋マジック」と言われたように一貫して打順や守備位置に関して複数の役割を選手に求めました。これも信念ある選手起用といえるのではないでしょうか。そしてそれがうまく機能してリーグ優勝につながりました。
一方で、これと同じ戦い方を選択してセ・リーグ3位に終わったのが阪神です。矢野監督は、選手のポジションを固定しなかったことが、マイナスに作用したとの批判を受けました。結局、同じような戦い方をしていても、勝ったか負けたかという結果によって評価が変わるのがプロ野球の世界といえるでしょう。
話は変わりますが、プロ野球というのは不思議なもので、選手を流動的に起用する監督のあとには、選手を固定して起用する監督が就任するようになっています。また、少し優しい監督のあとは、厳しめの方が監督をされる、というように順番になっているわけですね。
対極的な特徴をもつ監督が繰り返し交代していく流れがある中で、この流れの中のどこかで勝てばいいと考えるのか、それともその流れを止めて、似たような特徴をもつ監督のもとで長期的にチームを作っていくのか、そのあたりの方針を球団はしっかり考えていかないといけないと思います。
来季の阪神の監督は、矢野耀大さんのあとを岡田彰布さんが受ける形になりました。先述した「流れ」の話でいえば、岡田監督は、どちらかというと選手起用をガチっと固定したい監督だと思います。